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第五章
19.脅し~ロベルトside
しおりを挟む最初からロミオはエリーゼ以外眼中になかった。
なのに周りの噂を鵜呑みして、真実を確かめなかった馬鹿親父の失態だ。
魔力を重要視するのは解る。
だが、魔力はそこまで万能じゃない。
何より人の価値はそんなもので決まるか。
決まってたまるものか。
俺はスザンナに視線を送りアイコンタクトを取った。
「スザンナ様、貴女様はロベルト殿下と何故婚約を」
「これ!」
「申し訳ありません」
皇女殿下が気になるのは無理もない。
普通に考えれば、仲違えをしたわけではないならありえないだろうな。
「エリーゼ嬢との婚約解消で慰めてくれたのが彼女だったんです。元より私とエリーゼ嬢は友愛の情しかなかったので」
「私も当初はロベルト殿下が余りにも気の毒でなりませんでした。ですが、私達は愛し合う様になったんです」
まぁ、俺達の愛は共に利害関係が一致しているからだが。
エリーゼとロミオのような純愛ではなく共に利益があるからだが、これも一つの形だろう。
「素敵ですわね」
「ああ、エリーゼ嬢を見るあたり。伯爵家のご子息とも仲睦まじくお似合いだったからな」
「きっと運命の女神様の加護ではありませんか?」
「そうですわね」
ある意味、運命の糸で結ばれているのかもしれない。
一時は不治の病に侵され、華麗なる一族とまで呼ばれたスチュアート伯爵家は危なかった。
サブリナ様の病を救い、シルビアの悪い噂を取っ払い、伯爵家を建て直したのはエリーゼの功績だろう。
彼女無くして今の伯爵家はありえないのだから。
「次期伯爵夫人であり宰相の奥方が彼女なら今後は安心だな」
「えっ…」
「そうですわね。宰相の奥方は言わば外交官。親善大使も代行する事もありますし。我が帝国でも宰相の奥方は重要な役目を担っています。彼女なら心配ありません」
「ええ、私も安心しましたわ。これならば良きお付き合いができますわ」
背後で歯ぎしりをする文官達。
他にも、エリーゼがいるから大丈夫だと言う彼等に不服だと思っている者は多い。
既に国王など眼中になさそうだからな。
「しかしながら…」
「万一彼女が魔力がないと馬鹿にするなら、私達も考えなくては。火の精霊の加護を与えるに相応しくないと言う事ですからな」
「なっ!」
これは愉快だ。
南帝国の守護神は朱雀で、火の神を司る。
故に彼等を怒らせれば、火の精霊の加護を奪う事もできる。
これは脅しだ。
エリーゼに手を出せば四大精霊の一角を担う火の精霊の加護を奪ってやると。
そうなれば他の四大精霊も加護を与え無くなるのだから。
終始、耐えるしかない馬鹿殿を見て胸がスカッとした気分だった。
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