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第五章

18.愉快な光景~スザンナside

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空気が一瞬で凍り付くとはこのことを言うのだろうな。


馬鹿殿が。
普段から男尊女卑が強い思考をここで思い知らせてやろう。


「この国では魔力で判断し、差別をしていたのか」

「残念ですわ。そのような考えの方が多いのですね」


「お待ちくださ…」


ここで関係が悪化すれば政治的にも問題が生じるだろうが、止めに入る文官も魔力絶対主義の男尊女卑だったからな。

少し、お仕置きだ。


「はい、そうなのです。エリーゼ嬢は魔力が低く、精霊の加護がないと判断され貴族達からは白い目で見られておりまして…その一方で魔力が素晴らしいと評判の妹君が持ち上げられていたたのですわ」

「スザンナ…」

「ですが、そのおかげで表向きは王都から追放という形を取り、トリアノン公爵は外交や視察に彼女を同行させ他国の文化に触れるように命じたのです。当初、五歳の頃に清の国にて、現在の傍仕えをしている侍女を選ばれました」

「まぁ、それで詳しいのですね」

「主従関係でありましたが、彼女にとっては姉同然。清の国の事を知りたがり、現在ではその侍女より清の国の文化に詳しくなってますわ」


「なんて立派なのでしょう。我が帝国でもそのような令嬢は少ないのですわ」


皇女殿下の春麗殿下が嬉しそうに微笑まれる。
彼女は女性でありながらも誰よりも優秀で、時代の皇帝とも言われる程だったからな。


女だからと言って家庭に入りそのまま終わるのではなく学びに精を出して、自ら国を良くしようとする姿勢を感心こそしても批難しないだろう。


「あれ程立派な令嬢を手放すとは、何か問題があったのか」

「失礼ですわよ貴方」

「しかし…エリーゼ嬢が婚約を解消になるとは」


冷や汗を流している馬鹿どもめ。
事の重大さを理解したか。


「すべては私の所為なのです」

「何?」

「あの日私は乗馬が得意な彼女に自慢の馬を見せようと馬場に連れ出しました。その所為で彼女は事故で暴れた馬に蹴られて頭に傷を負ってしまったんです」

「なんて事を…」

「そうだったのか」


「はい、顔に傷を作った娘など妃に相応しくないと反対されまして。私はてなばしたくなかったのですが、周りは許してくださらず」

「おい、ロベルト…」


中々の演技力だな。
半分は本当だが、ウソ泣きまでするとは中々だ。


「社交界では馬に蹴られても生きていた事を侮辱する言葉が広がりました。そんな折公爵家に縁談の申し込みがありまして」

「もしや…」

「はい、スチュアート伯爵家でございます。私の親友でもあるのですが、彼は幼少期からエリーゼ嬢の好いていましたが身分違いの恋に苦しまれていたのです。しかし、彼は諦める事ができず。元老院を説得した後に彼女を婚約者に迎えたのです」


「なんてロマンチックなのかしら。素敵だわ」

「ああ、貴族で恋愛結婚など私達ぐらいと思っていたが」


馬鹿殿を無視して盛り上がる二人。
上皇陛下の表情が柔らかくなる一方で馬鹿殿表情は険しくなる。


何も知らなかったし、事実を知らされても噂だと信じて疑わなかったからな。

今でもスチュアート家が嫁に望んでいるのはマリアンヌだと思っているのだから。


本当に偏った男だ。


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