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第五章

12.厳しい言葉

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心の底でまだ大丈夫だと思っていた。


でも本当は甘かった。


「エリーゼ、顔を上げなさい。ちゃんと前の見るのよ」

「伯母様…」

「貴女は本当の意味で周りをちゃんと見なさい。貴女が現実としっかりと向き合い、切り捨てるべきは何か見極めなさい」


今まで優しかった伯母様。
他者を慈しむ念の強い伯母様はこんな事は言わなかった。


「私は貴女に愛情深く、情けを持つようにと教えて来たわ。弱い立場の者を思いやり、本当の貴族の在り方とは何か、地位ある者の振る舞いを教えて来たわ」

「はい…」

「だけど、今の貴女は、情けでも慈悲でもない。ただ家族を切り捨てられないでいる甘さです。時には厳しい判断を下さなくては守るべき民を守れない」


私はマリアンヌと仲直りがしたくて。

あの子は私が出来損ないだから嫌っているけど、悪い所を治せばそれでいいと安易に思っていた。

「この先、貴女がどれだけ心を尽くし、言葉を尽くしても心を交わせない人間はいるでしょう。貴女は世界中の人に愛されるつもりですか」

「いいえ…そのような」

「ならば解りますね。もう一度マリアンヌをしっかりと見なさい。あの子が公爵家の為にあのような行動に出ているか、しっかりと見るのです」


「承知いたしました」


伯母様の言葉に私は胸が痛んだ。

それは、マリアンヌを切り捨てる理由を自分で気づけと言う事だ。


「エリーゼ、貴女は確かに魔力はほとんどないわ。だけど、魔力に勝るとも劣らない素晴らしい物を神様から与えられているわ。自覚なさい」

「私が?」

「そうです。ちゃんと見るのです。すべてを…」


私が見えてない物を見るとはどういうことなのかな。


「今の貴女は過去の貴女がいたから存在する。これまで努力し続けた貴女自身を否定することは、貴女を愛する者を侮辱し傷つける行為と同じです。どうか忘れないで」

「はい」


私は返事をするしかできなかった。


伯母様が言いたいことは解るけど、私はそんな大それたことはしていない。

多くの人に支えられ守られ、助けられて今がある。

一人では何一つなす事ができない私に、こんな事を言って貰っていいのか解らない。


「私の言いたいことはそれだけです。どうかしっかり考えて」


そう言い残し、伯母様はそのまま部屋を出て行った。



私はその日から、マリアンヌと距離を取り始めたのだった。


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