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第五章
5.親友のように
しおりを挟む「美味い!美味いぞ!」
さっきまでの食欲の無さは何処に行った。
「味がするぞ!この梅干しにふりかけも最高だ」
「もう、貴方ったら」
梅干しが大好物らしく、今でお粥をお代わりしている。
「お粥はまずいのを抜きにしても、この梅干しは本物だな」
「私の侍女の出身地は梅が特産物なんですが、私も梅干しに心を奪われ十年間研究に研究を重ねました。ちなみにこの梅は長年紫蘇に漬けている一級品です。酢漬けではありませんよ」
「お嬢さんは梅の酢漬けと梅干の違いを解っているのか」
「勿論です」
前世でも梅干しには二つあった。
一つは手間をかけて昔ながらのやり方で作られた梅干し。
もう一つは化学調味料を使った酢漬け。
後者は手間も要らないけど、本格的な梅干しを食べて来た人間にとっては食べられず、変な後味だけが残るのだ。
「私は梅干しの種の中にある天神様は絶品で」
「うんうん、私も大好物だ。小さい頃は種を砕いてよく食べたもの」
なんてことだ。
ここまで私と話の合う人がいただろうか?
ランでもはしたないので止めるように言われたぐらいだ。
「ホカホカのご飯にお湯を注いで梅干しの肉が残った種を入れるも好きで」
「解るぞ!梅肉を最後まで啜るのが一番だ」
私達は視線を合わせ。
「「心の友よ!」」
抱擁を交わした。
しかし――。
ガシャン!
「「え?」」
振り返ると。
「エリーゼ」
「おっ…お母様」
般若の如く怒っているお母様の背後には不動明王が見えた。
「何をなさっているのです」
「春麗…」
隣にいる若い女性はお知り合いのようだ。
ランと同様に黒髪に長身の美女だったが、お母様同様にすごいオーラ―を放っている。
「「そこにお座りなさい!」」
「「はぃぃぃ!!」」
私達二人は病人であるのに、冷たい床に正座をさせられた後に。
三時間にわたるお説教に激マズおかゆを梅干し無しで三食食べさせらると言う苦行を強いられるのだった。
おかげで退院する頃には痩せてしまって、お父様にとても心配されたのはまた別の話だった。
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