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第四章

30.あの日の選択~国王side②

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ロベルトの願いにより期間限定の婚約話を聞かされたのは五年前。



「父上、今日はどうしても我儘を聞いていただきたく思います」

「何だ?藪から棒に」


普段から真面目に公務を果たすも、掴みどころもなく困っていた第一王子のロベルトがお願い事とは珍しい。


「お前がお願い事など珍しいな。たいていの事は自分で何とかしてしまうと言うのに」

「どうしても欲しいものがあります。ですが、私だけではどうにもならないのです」

「良い、言って見よ」

幼少期の頃とは異なり成人してからは落ち着きを取り戻したのだから無理は言わないだろう。


「では、トリアノン公爵令嬢を期間限定で婚約させてください、偽装婚約でお願いします」

「そうかそうか…いいぞって、何だと!」


今何と言った?


「ロベルト…」

「証言は取ったぞ!父上!」

「勝ち誇りなながら言うんじゃない!」


ようやく人並みになったと思った感動を返せ!


「父上、これはあくまで国の為でもあるぞ?」

「何がだ!お前は私の友人であるトリアノン公爵を侮辱する気か!」

「逆だ。俺は彼女を好いているし、尊敬もしている」


だったら何故、こんなふざけた真似を言うのだ。
偽装婚約と言う事はいずれ婚約を解消する事だろうが!


「エリーゼの今の状況を考えてだ…社交界でなんて言われているか解っているだろ」

「だからこそ…」

「ロミオがエリーゼに惚れている…っていうか、元老院のタヌキ達に勝負ふっかけてる」

「は?」


ロミオとはユアンの息子の彼か?
あの絵にかいたような真面目で24時間表情が全く変わらないのに色気が触れている美少年の。


「俺はロミオとは幼馴染でエリーゼとも友人だ。だからこそ二人の仲を取り持ってやりたい…だが、エリーゼを守るのは友人では難しい。一時的に俺の婚約者にして馬鹿共から守ってやりたい」


エリーゼ嬢も限界と言う事か?
お前がこんなふざけた真似をしなくてはならない程に。


「それに俺は王位に着くわけじゃないから、婚約で問題が起きて大丈夫だ。エリーゼにの名誉を守る方法も考えてある…後生だ父上!」


「ロベルト…」


異常な程を弟を愛し、何時も私を悩ませているお前が。


友の為に頭を下げる日が来るとは。
お前は良き友人に恵まれたのだな?嬉しいぞ。


「良い、解った。付き合ってやろう」

「本当か?」

「トリアノン公爵夫人にも義理がある。何より、エリーゼ嬢がスチュアート伯爵家に嫁ぐことは王家にもメリットしかないからな」

中立を保ちながらも私に忠義を尽くしてくれるスチュアート家を守る為にもエリーゼ嬢が嫁ぐのは悪い条件ではない。


明るい未来を願っていた。


なのに何故だ。



「エリーゼが馬に蹴られて重傷だと?馬鹿な…お前の馬は全て管理されているはずだ」

「ああ、特にあの馬は大人しいし。急いで調べている所だ」


馬場で馬を見ている最中に馬が暴れエリーゼは頭を負傷して意識不明状態になるも、すぐに意識を取り戻したが。


大臣、特に貴族派を押す大臣達が傷物令嬢を婚約者に置くのは良くないと言い出し、止む無く婚約解消になるも、エリーゼを苦しめる噂を流したのだ。


こんなことになるとは思わず、私も胸を痛めたが。
そのタイミングでスチュアート伯爵との婚約が纏まり安堵したのも束の間。


馬場にて針が落ちていた。
そして調査の結果、馬に針を仕込み暴れるように仕組み、背後で今回の事件を引き起こした犯人が、エリーゼの妹のマリアンヌ嬢であると判明した時、怒りを覚えた。

姉を殺そうとするとは何事だ。
彼女が負傷した後も平然と社交界で笑っていたと聞くではないか。


姉を殺そうとしたマリアンヌ嬢を私は警戒しながら監視を置くことにしたのだ。

もし彼女が、クーデターを企てていたのであれば。
貴族派と手を組んでいるのではないかと疑いを持っていたのだった。


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