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第四章

25.お気に入り~ハロルドside

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私は昔からすべてが退屈に見えた。
刺激のない日々にうんざりしながらこの世界に絶望していた。


人よりも優れているのは時として苦しい者だった。
私は幼少期から記憶力が良く、一般の人間が苦労して得るスキルをあっという間に覚える事ができた。

他にも優れ過ぎているがゆえに、幼児の時点で王宮家庭教師を泣かせ自主退職に追い込んでいた。

全員私に教える自信がない理由だ。
父上も見かねて王立図書館で自主学習をして時折、学者に学ぶシステムを取るようになった。

その所為で私は他人の気持ちが解らない。
できないのをできないと言って何が悪いのか、何故他人を妬み嫉妬して嫌がらせに労力を使うのか。

そんな暇があれば学べばいい物を。
実に愚かだと思っていたのだが、私の日々が一変することになったのはロベルトが彼女を連れて来た瞬間私の常識は覆された。


「ハロルド、紹介するぞ」

「お初に目にかかります。トリアノン公爵が長女、エリーゼでございます」

「ああ、よろしく頼む」

カーテシーは微妙だな。
一応は形になっているが良いとは言えない。


「そんな目で見てやるな!まぁ彼女はずっと領地に籠っていたから淑女教育ができていないんだ。他にも足らずはあるんだが…」

「ご無礼を…次までには頑張ります」


ドサッ!


そう言いながら床に落ちたのは誰でも解るお辞儀の仕方と書かれていた本だった。

何所に隠していたんだ!


「ああ、うっかりしてました」

「何だ?ドレスにポケットを作ったのか?」

「はい、何時でも取り出せて便利で…」

ドレスにポケットだと?
しかも、よく見ると簪にはペンが挿してある。


「私は物覚えが悪くて、メモを取るようにしているんです」

「素晴らしい。なんて斬新なアイデアだ」

「は?」


私はこの時大きなひらめき感じた。
この世には天才と平凡が存在するが、彼女は天才ではないが平坊とは言い難い。


こんなアイデアをする等!
それから色々話したが、彼女は一般的教養は欠けているが、ひらめきが素晴らしく独創的な感性を持ち合わせている。

何より私と会話が成立する。
他の貴族令嬢や、子息は直ぐに耐え切れず逃げ出すのだ。


「君は頭が悪いんだな」

「ハロルド…」

「だが、馬鹿は天才と紙一重というではないか。ではこれから専門的なテストをしてみよう」


中々興味深い令嬢だ。
勿論一般教養の試験は惨敗であるが、薬草や、専門的な事に関しては素晴らしい成績だ。


しかし、やはり一般的な勉強は理解力が遅いのだが、私の研究心に火がついた。

面白い。
彼女の頭の中はどうなっているんだ。

普通、この程度は少し勉強すれば取得できるのにと思ったが彼女は極端だった。


「エリーゼ、君程の興味深い逸材はいない。ここまで馬鹿は中々いないではないか」

「そうですか?」

「褒められていないからな」

これがきっかけだった。
私が人間の頭脳を分析したい、他人の心理を知りたいと思うようになったのは。


今までできない人間を理解できなかったが、エリーゼに勉強を見るようになってから人には得意な事と苦手な事があるのだと理解した。


私は自分にできないことを他人にできないのはおかしいと思ったが違ったんのだ理解した。


彼女を通じて私は視野を広くすることができたが。


私の楽しみを奪う不当な輩がいる。
彼女は私のお気に入りなんだ。


私の楽しみを奪うのは許せない。


何より、国一番面白くないロミオが面白くなる。

彼女はこの国を面白くさせるべく神に使わされたのだ!


なので、排除する者は許さない。

これからも私を楽しませてもらわなくては!


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