177 / 311
第四章
25.お気に入り~ハロルドside
しおりを挟む私は昔からすべてが退屈に見えた。
刺激のない日々にうんざりしながらこの世界に絶望していた。
人よりも優れているのは時として苦しい者だった。
私は幼少期から記憶力が良く、一般の人間が苦労して得るスキルをあっという間に覚える事ができた。
他にも優れ過ぎているがゆえに、幼児の時点で王宮家庭教師を泣かせ自主退職に追い込んでいた。
全員私に教える自信がない理由だ。
父上も見かねて王立図書館で自主学習をして時折、学者に学ぶシステムを取るようになった。
その所為で私は他人の気持ちが解らない。
できないのをできないと言って何が悪いのか、何故他人を妬み嫉妬して嫌がらせに労力を使うのか。
そんな暇があれば学べばいい物を。
実に愚かだと思っていたのだが、私の日々が一変することになったのはロベルトが彼女を連れて来た瞬間私の常識は覆された。
「ハロルド、紹介するぞ」
「お初に目にかかります。トリアノン公爵が長女、エリーゼでございます」
「ああ、よろしく頼む」
カーテシーは微妙だな。
一応は形になっているが良いとは言えない。
「そんな目で見てやるな!まぁ彼女はずっと領地に籠っていたから淑女教育ができていないんだ。他にも足らずはあるんだが…」
「ご無礼を…次までには頑張ります」
ドサッ!
そう言いながら床に落ちたのは誰でも解るお辞儀の仕方と書かれていた本だった。
何所に隠していたんだ!
「ああ、うっかりしてました」
「何だ?ドレスにポケットを作ったのか?」
「はい、何時でも取り出せて便利で…」
ドレスにポケットだと?
しかも、よく見ると簪にはペンが挿してある。
「私は物覚えが悪くて、メモを取るようにしているんです」
「素晴らしい。なんて斬新なアイデアだ」
「は?」
私はこの時大きなひらめき感じた。
この世には天才と平凡が存在するが、彼女は天才ではないが平坊とは言い難い。
こんなアイデアをする等!
それから色々話したが、彼女は一般的教養は欠けているが、ひらめきが素晴らしく独創的な感性を持ち合わせている。
何より私と会話が成立する。
他の貴族令嬢や、子息は直ぐに耐え切れず逃げ出すのだ。
「君は頭が悪いんだな」
「ハロルド…」
「だが、馬鹿は天才と紙一重というではないか。ではこれから専門的なテストをしてみよう」
中々興味深い令嬢だ。
勿論一般教養の試験は惨敗であるが、薬草や、専門的な事に関しては素晴らしい成績だ。
しかし、やはり一般的な勉強は理解力が遅いのだが、私の研究心に火がついた。
面白い。
彼女の頭の中はどうなっているんだ。
普通、この程度は少し勉強すれば取得できるのにと思ったが彼女は極端だった。
「エリーゼ、君程の興味深い逸材はいない。ここまで馬鹿は中々いないではないか」
「そうですか?」
「褒められていないからな」
これがきっかけだった。
私が人間の頭脳を分析したい、他人の心理を知りたいと思うようになったのは。
今までできない人間を理解できなかったが、エリーゼに勉強を見るようになってから人には得意な事と苦手な事があるのだと理解した。
私は自分にできないことを他人にできないのはおかしいと思ったが違ったんのだ理解した。
彼女を通じて私は視野を広くすることができたが。
私の楽しみを奪う不当な輩がいる。
彼女は私のお気に入りなんだ。
私の楽しみを奪うのは許せない。
何より、国一番面白くない男が面白くなる。
彼女はこの国を面白くさせるべく神に使わされたのだ!
なので、排除する者は許さない。
これからも私を楽しませてもらわなくては!
57
お気に入りに追加
8,972
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!
ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。
全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。
言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。
食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。
アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。
その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。
幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる