176 / 311
第四章
24.第二王子殿下
しおりを挟む昨年の秋に留学をされ、二年は帰って来ないと風の噂で聞いていた。
私達が留学の話を聞いたのは当日で、見送りもできずにいたけれど、帰国されていたなんて。
「ロミオ。俺は中立的な立場だ。兄の思いも知っている」
「ロベルト殿下の思い?」
「ああ、兄はエリーゼを好いていたが友人としてだ。社交界で不当な扱いを受けている彼女を守りたい思いと、親友の思い人を守りたい思いから婚約をした。君が彼女を迎えに行けるまでの手札が整えば婚約解消するつもりだったんだ」
「はい?」
じゃあ、ロベルト殿下は最初からそのつもりで?
まぁ、仮初の婚約だってことは理解していたけれど。
「言い方が悪いが、放蕩過ぎる兄と真面に付き合える令嬢がいない。君には随分苦労を掛けたが、君を好いていたのは本当だ。友人としても婚約者としても理想的だった」
「こっ、光栄です」
「君と家族になりたかった私としても少々残念だが…ロミオとならお似合いだと思うよ」
「ありがとうございます?」
何で疑問形なんだろう?
これは私を助けてくれているんだと思うが。
「君は実に面白い。私の人間心理の研究をはるかに超える素晴らしい逸材だ」
図書館に籠って、ずっとそんな研究をしていたのか!
やたらと難しそうな本ばかり読んでいるかと思えばそんな理由?
留学したのも自分の探求心の為じゃないよね?
「君の突拍子のない行動は私の楽しみだから、これからも楽しませてくれ」
「ハロルド殿下が私をどう思っているか良くわかりました」
私をどう見ているか良く解った。
本当に大丈夫だろうか?王家の王子達は。
末の第四王子はリオネル様を師と仰ぐ脳筋だし。
私の事を言えないのではないか?
「まぁ、そういうわけだ。この場で宣言しよう。エリーゼ嬢とロミオは王が認めた婚約者だ。後見人に元老院も付いている。この事実は揺るがない」
「そっ…そんな」
「そう言えば、この学園では問題を起こすとランク下げになる校則は知っているか?それが使用人ならば主に責任を問われるんだが」
「何ですって!」
「マナー違反でランクを一つ下、さらに周りを巻き込んだ大騒動は」
「何をするんですの!」
ハロルド殿下はマリアンヌの胸に飾られているバッチを奪う。
「最低ランクの青銅ランクの下は鉄ランクだ。今まで我が校では鉄ランクになった者はいないのだが。初めてだな。おめでとう」
おめでとうと言いながらも目は笑ってない。
この笑い方はロベルト殿下にそっくりだ。
普段から表情が変わらないと言われていたのに、こんな時だけ黒い笑みを見せるなんて!
いい性格をしているわ。
64
お気に入りに追加
8,972
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
全てを諦めた令嬢の幸福
セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。
諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。
※途中シリアスな話もあります。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!
ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。
全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。
言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。
食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。
アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。
その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。
幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる