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第四章
5.正論
しおりを挟む私の言葉に異論を唱えたのはマリアンヌだった。
「そのような言葉、妄言にすぎませんわ。この世は生まれですべてが決まっています。平民が貴族よりも上に行くことができなければその逆もしかり…簡単に無責任な事を言わないでください」
「無責任な言葉を言ったつもりはないのだけど」
「つもり?その時点で無責任だわ。できもしないことを!」
私の言葉はそんなに無責任だっただろうか。
確かに生まれですべてを決められていた時代はあるけど今は違う。
「そうよね…マリアンヌ様の言う言葉にも一理あるわ」
「所詮が綺麗ごとじゃない?」
「エリーゼ様は公爵令嬢だから白金になれたのでは?」
マリアンヌの言葉を支持する声が出て来て、一度は落ち着いたのに逆戻り所か悪化している。
「生まれで優遇されている高位貴族は確かにいるでしょうが、それだけで周りに認められましょうか」
「は?」
「地位とは本来能力に見合ってこそ成り立つ者。当学園には優秀な先生方、教授、博士がいらっしゃいます。そのすべてが高位貴族なのでしょうか」
「それは…」
「中には生まれが貧しい方もいらっしゃいます。皆様は才能も有りますが…どんなに優れた才能も使い方が解らなければ意味がありません。宝石も加工して美しくなるように、皆様はまだ宝石の原石です」
努力すれば誰だって成功するとは言わない。
でも、努力しなければ得ることができない事も沢山あるのだから。
「どんな種でも同じ花はありません。人を魅せる薔薇や人を癒すラベンダー。花の種類は多くありますが、不要な花はありましょうか?私は皆さんが沢山の可能性を花開く事を心から望みます」
例えその能力が表に出なくとも。
「どんなものにも意味があります。先ほどおっしゃられたように…努力だけでは難しいかもしれません。ですが、この学園では多くのチャンスがあります。皆さんにはそのチャンスを自分の物にしていただきたい。ですがこれは私の願いで強要する事はありません」
マリアンヌの言う事は正しい。
下剋上は勘単にできるものじゃないし、現実はもっとシビアだけど。
「どうか皆さんの三年間の歩みが未来に羽ばたく支えとなりますことをお祈り申し上げます」
「なっ…」
私の言うべきことは言ったわ。
彼女達の言葉も受け止めながらも私なりの思いを伝えた。
後は非難されても後悔はないと思ったが。
パチパチ!
拍手の音が聞こえた。
一人二人、と聞こえ。
「ありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!」」」
最前列に並ぶ新入生達が拍手を送り立ち上がり、頭を下げて礼をしたのだった。
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