上 下
155 / 311
第四章

3.アドリブ

しおりを挟む



普段から大勢で何かを発表する機会なんてない。


まずい緊張して来た。
何を言ったらいいんだっけ?

最初の挨拶は!

頭の中が真っ白になった私は。


バァン!


演台を叩いてしまった。

そしてもう、スピーチの内容は頭から抜け落ちていた。


「入学おめでとう!この日を迎えられた事を心からお祝い申し上げます。ですが、今日から皆さんが待っているのは楽しい学園生活だけではありません」


私の言葉に在校生もは?というような声を上げた。


「この学園ではみな平等。身分制とはランク付けにより決まります。よって下剋上ができる唯一の場所でもあります。故に、学園での評価が低ければ地獄の三年間が皆さんを持っているでしょう」


私は気にせず言いたいことを述べた。
祝いの言葉は最初に言ったから後は簡潔に言おう。

「学園生活では勉強三昧、テスト三昧、訓練三昧の日々が皆さんを待っています。試験を落とせば落第留年は当たり前の厳しさが待っており…」


「今すぐ幕を…もが!」


横で生徒会実行委員と放送部が急いで幕を閉じようとする声が聞こえたがお構いなしに話す。


「学園での生活態度も重要です。ですがこの難点をクリアすれば、卒業後は皆さんの輝かしい未来が待っています。例えは辺境地からいらした三列目の貴女」

「え?」

「考えてみてください。貴女が優秀な成績を残して卒業後に王宮の文官秘書になればどうなるでしょう?貴女の領地に関心が行くのではないでしょうか?こんなに素晴らしい人材を育成した生徒をもっと学園に、王都にと」


「どうして解ったんですか」


「次に斜め後ろに座席に座る知的な君」

「え?僕!」


私は顔を見ながら笑顔でスピーチを繰り返した。

「貿易が盛んな領地からいらした優秀な生徒さんが我が校で功績を上げ、後に外交官になれば中央はどう評価するでしょうか?皆さん想像してみてください…自分の努力一つで人生が変わるだけでなく他の人の人生も明るい未来に導くこともできるのです」


「「「おおお!」」」


新入生は乗って来たな。
うんうん、いい感じじゃないか?


「ですので、これから三年間。切磋琢磨して得意分野を磨いて国の為、家族の為、そして何より自分の為に頑張ってください。皆さんの可能性がこの学園で花開く事を心から応援し、また支援させていただきく思います」



「「「ワァァァ!!」」」


なんとか上手く纏められたようで良かったと思ったが。



「意義あり!」


無事に終わったと思った瞬間に誰かに阻まれてしまった。


「そんな絵空事、ありえないですわ」


私の言葉をまるで夢物語だと異論を唱えたのは。


マリアンヌだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

全てを諦めた令嬢の幸福

セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。 諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。 ※途中シリアスな話もあります。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。 全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。 言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。 食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。 アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。 その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。 幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…

処理中です...