上 下
150 / 311
第三章

34.もう一人の姪~シェリラside

しおりを挟む




思い詰めた表情をするジリアンを見て私はなんて声をかけて上げれないいか解らなかった。

ジリアンは誰よりも愛情が深い。
数々の問題を起こすマリアンヌを既に公爵家との縁を切らせた方が良いと言う声が出て来ていた。


けれど、ジリアンは首を縦に振らなかった。
他所に出しても問題を起こさないとは言い切れないし、無責任だと考えていたのだろう。

自分の教育が間違っていたと責めている。
ジリアンが悪いわけじゃないし、間違ってたとしたらエリーゼは?ハイネは?


二人は本当に良い子に育ったわ。
特にエリーゼは本当に優し子に育っている。

ジリアンは否定するけど、エリーゼはジリアンにそっくりだわ。

昔の姿そのものだわ。
私が病弱で、寝たきりだった事で他所の貴族から心無い言葉で責められた時もジリアンは私を庇って守ってくれた。


元から気の強い子だった。
目元がつり目で少しキツ目に見えるけど、美人だとも思っている。

私のように弱弱しい印象では他家から舐められるし。


人一倍正義感が強く、健康だったジリアンは私や末の妹のエイリンを守ってくれていた。

誰よりも優しい子なのに。
本当は誰よりも傷つきやすい性格なのに隠していた。



「ジリアン、私もエイリンも貴女の味方よ。貴女の決断に従うわ」

「お姉様…」

「だけど忘れないで。貴女は一人じゃないわ。私達がいるわ」


もしマリアンヌが公爵家を出るようなことがあっても、遠くから見守る事は出来る。



だけど!


あの子はどうしてあんな風になってしまったのかしら。


ハイネも少しばかり性格が拗らせてしまっているけど根は優しい子だわ。

マリアンヌは何故ああもエリーゼを、自分以外の人間を見下し、常に自分を中心に考えるのだろうか。


私は…あの子を愛せない。
何度も頑張ってエリーゼのように愛そうと思った。


けれど、同じように愛せないの。
ジリアンの子だから愛情は少しだけならあるわ。

でもエリーゼが同じ状況になったらどうしただろうか?



エリーゼだったら私は養女の迎え、私の全てを尽くしてでも守ろうと思った筈だ。


でもマリアンヌにそこまでできるかと言われたら否だわ。

冷たい言い方だけど、そこまでの愛情を持てない。


持とうとも思えない状況にまでなっているの。


「お姉様、ごめんなさい…ごめんなさい」


ただひたすら謝るジリアン。

あの子は気づいているのかしら。


ジリアンがマリアンヌを守る為に修道院に入れて、その後留学の手続きをしようとしたことを。


何一つ理解しようとしないあの子に苛立ちさえ感じていた私は、酷い伯母なのかもしれない。

しおりを挟む
感想 683

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【1/23取り下げ予定】あなたたちに捨てられた私はようやく幸せになれそうです

gacchi
恋愛
伯爵家の長女として生まれたアリアンヌは妹マーガレットが生まれたことで育児放棄され、伯父の公爵家の屋敷で暮らしていた。一緒に育った公爵令息リオネルと婚約の約束をしたが、父親にむりやり伯爵家に連れて帰られてしまう。しかも第二王子との婚約が決まったという。貴族令嬢として政略結婚を受け入れようと覚悟を決めるが、伯爵家にはアリアンヌの居場所はなく、婚約者の第二王子にもなぜか嫌われている。学園の二年目、婚約者や妹に虐げられながらも耐えていたが、ある日呼び出されて婚約破棄と伯爵家の籍から外されたことが告げられる。修道院に向かう前にリオ兄様にお別れするために公爵家を訪ねると…… 書籍化のため1/23に取り下げ予定です。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

処理中です...