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第三章
32.最後の決断~ジリアンside
しおりを挟む秋が終わりを迎え冬になった頃。
収穫を終えた領地に挨拶に向かった私達は雪景色を見上げながら美しい故郷の景色に癒されていた。
しかし、どんなに美しい景色を見ても私の心は晴れやかにはならなかった。
その理由が――。
「ああ、なんて事。よりにもよってあの子を学園に入れるだなんて」
「ジリアン、落ち着きさない」
「お姉様、お体が弱いのに、我儘娘を引き取ってくださったのに…あの子は!」
「ジリアン、そんなに怒っては体に悪いよ」
私を宥める義兄。
体の弱い姉を支える心優しきクレセント公爵家の婿でもある。
「魔力のある者は王立魔法学園に通わなくてはならあいのは暗黙の了解なのは解っているわ。だから留学させようと思ったのに…まさか留学先から断られるなんて」
「最初は乗り気だったのよね?」
「それが、先方はエリーゼだと思っていたそうで」
社交界で爪はじきになった令嬢の噂は今では薄れていた。
規格外の令嬢である印象は変わらないけれど、学園に入ってからのエリーゼの成長は目を見張るものがあると学園長からもお褒めの言葉をいただいた。
そのおかげでもある。
自由研究の新しい銀食器が他国の王家の方が気に入り、友好の証にしたいと言われた事でエリーゼの存在を無視できなかったのだろう。
それでも悪い噂は僅かながらあるけど、優秀な文官はエリーゼが評価されるのを面白く思わない輩が流したでっち上げただと言ってくださった。
今では友好国、他国の王侯貴族からも関心を持たれている。
元より幼少期に旦那様が視察に同行させていた事もあり顔見知りの他国の王族も少なくないので彼等は変わり者の姫と言いながらも常識に囚われない柔軟性と宗教に関心を持ちことから好意的だった。
またノブレス・オブリージュを第一と考える国はエリーゼが幼い頃から慈善活動をしている事に好感を持ってくれていたので、万一祖国で生きにくいなら是非と言ってくれていた。
それは他国に嫁がせてはという考えだった。
私も旦那様もエリーゼを手元に置きたいというエゴもあったが、国の情勢を考えた故にお断りをしていたのだが、エリーゼが懇意にしていた女性がいる。
その方は女性の支援をしている事でも有名だった。
我が国では魔力がない貴族令嬢は軽視されるのでその救済を活発に行っている人徳者でもある。
マリアンヌの話を聞き、ご尽力くださったのだけど。
いざ、マリアンヌを目にすると、彼女の補佐をしている教員や関係者は即座に断りを入れて来たのだ。
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