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第三章
25.馬鹿な人達~エカテリーナside
しおりを挟む最近、妙な噂が流れていた。
社交界も学園内でも噂好きな人は多いので気にしていなかったが。
「エカテリーナ様、良くない噂が流れていますわ。何とかしませんと」
「ええ、あの紛い物令嬢がエカテリーナ様と仲良しだとか妄言をしているそうではありませんか」
仲良しという言葉に頭が痛くなった。
何所をどうしたら私と彼女がそんな風に見えるのだろうか。
自慢ではないが私は彼女に嫌われるようなことをしても好かれるようなことをした事はない。
「生徒会の皆様に媚びを売り、エカテリーナ様を失脚させようとするとはなんて事ですの」
媚びを売る?
何を言っているのだろうか、彼女達は。
「まんまと皆様を騙したようですが」
「生徒会の皆様の人の良さを付けむなんて」
生徒会の連中は強者揃いと言えば聞こえはいいが、権力者達からすれば厄介な存在なのに。
現在、我が国は王族派と貴族派の二つに割れて、水面下で派閥争いをしている中でも第三勢力であるトリアノン家は重要な位置にいた。
彼等がどちらかに属せばパワーバランスが崩れてしまうからだ。
王族につけば、貴族派を潰せると考える愚か者はいるけど、そんな簡単な話ではない。
下手に貴族派を刺激してしまうし。
貴族派の中には穏健派で外国との渡りのある貴族も多いのだ。
そんな彼等のストッパー役にもなるのがトリアノン公爵閣下だ。
表向きは物腰柔らかい姿勢であるが、彼は人徳者でもあるとお父様が言っていた。
あの優秀な宰相閣下とも親しく。
これまで心ある貴族の為に自分の身を削って救った者が多い。
邪な考えも見返りも無しに助けた故に質が悪い。
彼は元は、跡継ぎでなかったのにも拘らず、公爵夫人を妻に迎えたいがために死ぬ気で現在の地位を築き上げたのだ。
一部では愚か者と言うが、彼の懐の深さに惚れこむ人間は少なくない。
特に辺境地のコネクションは国一番と言えるだろう。
ただ、トリアノン公爵閣下は欲が少ない。
国を愛し、民を愛する気持ちは強いが、無駄な権力を好まず、贅沢を好まない。
無駄な争いもしないからこそ、今の地位を持続できている。
下手に欲を出して、自滅する貴族は星の数ほどいるけど、彼のような貴族は少ない。
彼は利益があれば自分の懐には入れずに国に寄付するようなお人好しで、無駄に財を増やそうとはしないが、逆に侯爵夫人がしっかりしているのでバランスが取れているのだ。
正直、トリアノン公爵は人誑しの才能を持っている。
本人は一切の自覚が無いし、他人を利用する気がまるでないのだ。
そしてエリーゼ様もだ。
基本、社交界では他人を利用し蹴落とすのが普通なのに、エリーゼ様は他者を利用すると言う考えが薄く、自分が損な役目を自ら買って出る愚か者でもある。
そんな彼女が優秀な彼等を騙す?
ありえないわ。
彼等は恐ろしい程頭が良いのよ?
何故解らないのかしら?
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