上 下
116 / 311
間章

31.お食事会

しおりを挟む




私の立ち位置って何だろう?
モブの悪役令嬢でも、もう少しマシな見せ場はないのか。


「さぁ、エリーゼ様。ご遠慮なさらず召し上がってくださいませ」

「ありがとうございます」


現在サーシャの家でランチをごちそうになっているのだが、居た堪れない。

「サーシャ、やっぱり口に合わないのでは?」

「貴族の方だからな」


隣にサーシャのご両親がいらっしゃる。
申し訳なさそうな表情をするも、一番申し訳ないのは私だ。

「ご挨拶もままならないで、誠に申し訳ありま…」

グルルー!


「エリーゼ様。そんなにお腹がすいていたんですね」

泣いていい?
何で大事な場面で私は!


「エリーゼさん、諦めなさい」

「何でよ!今日の為に練習したのに…私は腹時計に負けたの?お嬢さんをお預かりしてますってちゃんと挨拶する予定だったのよ」

「エリーゼ、それは色々と違うぞ」

ロミオ様にまで呆れた表情をされてしまう。

「そうですわ。どんなに頑張って取り繕っても最後はバレますし。なら早い段階で晒しておいた方が良いですわ」

「シルビア様、事実であってもそこまでズバズバいうのはお可哀想ですわ。事実ですけど」

ジュリア様。
貴女は私に何か恨みがあるのでしょうか。

「はははっ、そうだぞ?無駄な努力だ」

「リオネルの言う通りだ。エリーゼ、無駄な事は止めろ」

「人間正直に生きた方が良いぞ」


くっ、この三人は論外だ。
私を貶しながらお腹を抱えて大笑いしている。


「サーシャ、ごめん」

「そんな、どうかお気になさらないでください。むしろ私は、そんなエリーゼ様の方が好きです」


なんて優しいの。
サーシャはヒロインを通り越して天使だ。

私のヒロインはサーシャだ。


「さぁ、冷めない内にどうぞ」

「ありがとう」

差し出されたのはシンプルなトマトスパゲティーだった。

「わぁー、すごくいい香り」


早速いただくことにした。

「エリーゼ様?」

「美味しい。懐かしいわ」

手づかみでスパゲティーを食べると、貴族組の彼等は驚いていた。


「どうしたんですか」

「手で食べるのか…」

「ええ」


クレセント領地の中には手で物を食べる習慣がある。
特にこのスパゲティーは歴史がある食べ物で、昔から手で食べることが多い。

その理由は今使っているフォークは肉を切るのに抑える為の物。
スパゲティーの麺を絡めるのに適していない。

私達が使うのも2つ又。
貴族が使うのはスプーンの先が3つ又になっているのだ。


「手で食べるのですか」

「確かに麺を絡めるのは難しいな」

シルビアとロミオ様だけでなく高位貴族はまずできなかもしれない。

私は田舎暮らしや他所の文化を学んでいたから可能だけど。


うん?

フォーク?


そうだ!
良い事を思いついた!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

全てを諦めた令嬢の幸福

セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。 諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。 ※途中シリアスな話もあります。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

処理中です...