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間章
30.家族
しおりを挟むその後、町の人達はサーシャの両親に謝罪した。
最初は二人も困惑していて何が何だか解らない表情をしてたが、タンタンが事情を説明し、サーシャのお母さんは涙を浮かべていた。
サーシャのお父さんは安堵した表情を浮かべ、サーシャは二人に抱きしめられていた。
二人はずっと隠れて戦っていたんだろう。
心無い噂に、後ろ指を指されながらもずっと耐え忍んでいたのだろう。
でも、もう誰かに罵倒される事もない。
「お母さん、お父さん…町の人にエリーゼ様が言ってくださったの。それで誤解が解けて」
「え…」
「本当にありがとうございます。手紙でも聞いております」
聞いているって何をだ。
もしや、成績がまずくて勉強を教わっている事とか?
サーシャにお菓子を作って貰っている事とか?
「エリーゼさん、どういう想像をしているのか安易に想像がつきますね」
「うるさわいよスコット…ほほっ。嫌ですわ。お世話になっているのは私の方です」
とりあえずボロを出さないようにしないと。
サーシャのご両親にきっちりご挨拶を思ったが…
その時、家の中からバジルの香りと食欲をそそるチーズの香りがした。
グゥー!
「何かしら?何かの鳴き声?」
「野生の動物か?子熊のような鳴き声だな」
まずい。
マズイ、マズイ!!
私の腹の虫が鳴り響いている。
「エリーゼ」
「おほほほ、ロミオ様。この町は野生の小動物がいるんですね!知りませんでしたわ」
とりあえず、早くこの場を離れなくては。
「スコット、何か食べるものない?」
「エリーゼさん…」
「お腹がすいて音が止まらないんだけど」
感動のシーンが台無しになる。
ここでお腹すきましたなんて言えるわけがない。
「とりあえず背を向けて、こっそり何か食べれば問題ないはず」
「大問題に決まっているでしょう。なんて意地汚いんですか」
「ちなみに目の前にある薬草がお菓子に見えて来たわ」
「正気に戻りなさい。これは下剤の薬草ですからね?生で食べたら速攻でどっさりですよ」
何とか下腹部を押さえるも、素敵な香りが…
「エリーゼ、大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
魔の悪いタイミングでロミオ様に視線を向けられる。
今はサーシャと仲睦まじくしてくれ!
そう思ったが…
「もう無理」
「ちょっとエリーゼさん」
耐え切れなくなった私はこれ以上無い程の音で腹の虫が鳴り響いた。
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