上 下
99 / 311
間章

14.私のヒマワリ~シェリラside

しおりを挟む



私の可愛い姪が来る気配を感じた頃、お母様がものすごいスピードで玄関に向かった。

そして悲鳴と共に地獄の鬼ごっこが開始された。


「これは、どうするべきなのでしょうか」

「皆さん、ようこそお越しくださいました」

「シェリラ様!」


玄関先で呆然と立ち尽くす、素敵なお客様を案内しなくては。


「私はエリーゼの伯母のシェリラ・クレセントですわ」


今日は沢山のお友達を連れて来てくれると聞いていたから楽しみだった。

「エリーゼから、毎日お手紙で聞かされているご友人ね?お会いできる日を心待ちにしてましたのよ」


「毎日…あの人は毎日手紙をだしていたんですか」


「ええ」

私の一日の楽しみはあの子からの手紙。
領地を離れてからも頻繁にお手紙を送ってくれて、楽しみだったわ。


「私が寂しがるものだから、あの子は毎日のように今日会った事を手紙にしてくれていたのよ」

「エリーゼ様、なんて優しいのでしょう」

「僕は、手紙に自分の恥を晒していないか気になりますね」

やっぱり聞いていた通りのユニークな友人だわ。

「しばらく二人の鬼ごっこは終わらないので、お茶でもいかが?」

「シェリア様!そのような事は侍女が…」

「侍女は休みを取らせているし、執事は今日の歓迎会の準備をしてもらっているわ。あの子の友人が来てくださるのに私がおもてなししないなんて我慢できないわ。楽しみにしていたのよ」

「かしこまりました…」

渋々だけどランは解ってくれたので良かった。


「お茶を飲みながらあの子の学園生活を聞かせてくださらないかしら?」

「エリーゼ様の事なら私にお任せください」

「ジュリア様、ズルいですわ!義妹の私がお話を」

「シルビア、ここは俺だろう」


私が訪ねると早々に立候補してくれるなんてエリーゼは好かれていて安心した。
あの子は社交界で爪はじきに合っているし、その原因は私にもあるので責任を感じていた。

私が病弱で、あの子は私のお世話をしてくれた所為で長く引き留めてしまった。

今でも申し訳なく思っているのわ。

でも…


「エリーゼ様は寮長なんですよ!」

「クラスでも、人気で、面倒見が良くてお優しくて私の自慢のお義姉様ですの!」

「シルビア様、さりげなく強調するのはどうかと?私は親友ですわ」


「あっ…あの!私が友達第一号だとおっしゃいました!」

「サーシャ、君も言うようになったな!しかし姉貴分はこの私だ」

「スザンヌ、君も似たようなものだと思うぞ」


社交界に馴染めなくても、学園でちゃんと友人を作ることができている。

きっと悪い噂が流れて、噂に左右されているだけ。
あの子は人を惹きこむ才能を持っているから、きっと大丈夫だと思っている。


周りにこんなに素晴らしい友人がいるのが証拠だわ。

だからもし…

社交界デビューした後にできることがあるなら何でもしたいわ。


「そろそろエリーゼを迎えに行きましょうか」


お母様とエリーゼの鬼ごっこを見守り、声を掛けに行くも、お母様に連行されてしまった。



本当にあの子がいると邸が明るくなるわ。

私にとってあの子はヒマワリなのよ。

しおりを挟む
感想 683

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

聖獣がなつくのは私だけですよ?

新野乃花(大舟)
恋愛
3姉妹の3女であるエリッサは、生まれた時から不吉な存在だというレッテルを張られ、家族はもちろん周囲の人々からも冷たい扱いを受けていた。そんなある日の事、エリッサが消えることが自分たちの幸せにつながると信じてやまない彼女の家族は、エリッサに強引に家出を強いる形で、自分たちの手を汚すことなく彼女を追い出すことに成功する。…行く当てのないエリッサは死さえ覚悟し、誰も立ち入らない荒れ果てた大地に足を踏み入れる。死神に出会うことを覚悟していたエリッサだったものの、そんな彼女の前に現れたのは、絶大な力をその身に宿す聖獣だった…!

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~

ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された 「理由はどういったことなのでしょうか?」 「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」 悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。 腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

地味薬師令嬢はもう契約更新いたしません。~ざまぁ? 没落? 私には関係ないことです~

鏑木 うりこ
恋愛
旧題:地味薬師令嬢はもう契約更新致しません。先に破ったのはそちらです、ざまぁ?没落?私には関係ない事です。  家族の中で一人だけはしばみ色の髪と緑の瞳の冴えない色合いで地味なマーガレッタは婚約者であったはずの王子に婚約破棄されてしまう。 「お前は地味な上に姉で聖女のロゼラインに嫌がらせばかりして、もう我慢ならん」 「もうこの国から出て行って!」  姉や兄、そして実の両親にまで冷たくあしらわれ、マーガレッタは泣く泣く国を離れることになる。しかし、マーガレッタと結んでいた契約が切れ、彼女を冷遇していた者達は思い出すのだった。  そしてマーガレッタは隣国で暮らし始める。    ★隣国ヘーラクレール編  アーサーの兄であるイグリス王太子が体調を崩した。 「私が母上の大好物のシュー・ア・ラ・クレームを食べてしまったから……シューの呪いを受けている」 そんな訳の分からない妄言まで出るようになってしまい心配するマーガレッタとアーサー。しかしどうやらその理由は「みなさま」が知っているらしいーー。    ちょっぴり強くなったマーガレッタを見ていただけると嬉しいです!

処理中です...