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間章
6.あの日の出来事
しおりを挟む嵐が去ったように静かになった。
「何ですかあの態度は!」
…と思ったが、そうは行かなかったようだ。
マリアンヌが去ったと後、スコットは声を上げて怒った。
ジュリア様も目が笑ってないし、リオネル様も何処か不機嫌そうだった。
「私の魔法で沈めてやろうか?」
「おいおい、物的証拠が残るだろ」
「フッ、そんなヘマはしない。死なない程度にしてやるさ。あんなまがいもの令嬢でも一応公爵家の娘だからな」
激しい!
かなり過激すぎるわ、スザンヌ様とロベルト様!
ある意味似た者同士だわ。
「お嬢様、あまりマリアンヌに様に近づかない方がよろしいかと」
「そうです。姉様がいない間もアイツがずっと素行が良くなることはなかった。修道院でも問題を起こしていたんです」
「領地でも問題視されてますわ」
ナタリーは不機嫌な様子で私が知らない間のマリアンヌの事を話してくれた。
お母様があの日以来、マリアンヌの教育を見直したそうだ。
でも、遅かれ早かれ修道院で礼儀作法の勉強をさせる予定だったらしい。
ただ、あの日。
私を身代わりにと言ったマリアンヌを見てお母様はこれまでの教育が悪かったのだと反省したらしい。
そこで団体行動を身に着けるべく院長先生に色々お願いしたのだけどすべて裏目に出てしまったのだ。
しばらく謹慎が解けた後にイズラも同行を許されたが、二人は全く反省していなかったらしい。
「失礼だが、本当に君の妹か…いくら何でも違い過ぎる」
「それは俺も思ったよ。エリーゼと違い過ぎる…第一、姉の代わりに俺の婚約者になるとは言いだすなんて正気の沙汰じゃない。あんなのを妃にしたら恥さらしも良い所だ」
「俺は、何故あんな傲慢な女が当初は婚約者にされたんだ。今思うとぞっとする」
「お兄様、お労しい」
皆言いたい放題だな。
一応私の妹だって解っているのだろうか。
「すまないな。君の身内を悪く言って…ただ、一年前のあの事件」
「え?」
「私は後から調べたんだが…当時暴れた馬には不明な点が多かったんだ」
私とロベルト殿下が馬場を歩いている時に馬が暴れた事。
おかしいとは思っていた。
馬はかなりの興奮状態だったけど、王宮の馬は念入りに手入れをしていたのに。
「馬は処分となったが、私は当時の事件をただの事故で終わらせなかった」
「ああ、調べた結果…馬からポフェルが検出された」
「精神刺激剤ですか…何故」
ポフェルとは精神刺激剤や精力剤に使われる薬草だ。
少量ならばいいが、接種しすぎると興奮して暴れてしまう患者もいる。
サロンに通う医師の方々が、ポフェルの禁制を考えていると言っていたぐらいだから。
「ああ、そのポフェルは馬にとってはかなり刺激が強い。暴れてもおかしくない…しかも馬は君だけを襲ったとなれば」
「誰かがをエリーゼの暗殺を企てたと言う事ですか」
「お兄様…」
「いや、殺すならばもっと確実な方法を企てるだろう…殺す気はなかったのだろう」
ロミオ様の言葉にスザンヌ様が首を横に振る。
私を殺す目的にしては確かに手ぬるいと感じてしまうのだ。
目的は別にあるはずだ。
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