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間章

5.侯爵令嬢の一喝

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何故か囲まれながら世話をされる私。
特にサーシャの過保護が半端なく傷はかすり傷にも満たないのに大事にされている。


でも、ここで魔法を使わせるわけには行かない。


「サーシャダメよ」

「でも…」

光魔法を使う事を良く思っていないサーシャに使わせたくない。


「サーシャの魔法は神様の贈り物なの。大事な時に使わないと…本当に、サーシャが心から使いたいと思う時に使わないと」

「エリーゼ様…」

光魔法の所為でサーシャは苦しめられて来た。
今でもこの魔法はサーシャにとっては苦痛ならばできるだけ使わせたくない。


サーシャが使いたいと心から望まないと。


「よし俺が…」

「お前は触るな変態が…治癒なら私も得意だ」

スザンヌ様が水魔法で癒してくれたおかげですぐに治った。


「なっ…水の高位魔法」

マリアンヌが驚き固まった。
確かに水の精霊の契約を結んでも治癒魔法を使える貴族は少ないのだ。

しかも詠唱無しで扱うのは王侯貴族の中でも五本の指に数えられる名家のみ。



「彼女はランフォード家でも一番魔力が強いからな。この程度お手の物だ」

見る見る、真っ青になるマリアンヌ。

「ランフォード家って…」

「ああ、私はランフォード侯爵家の長女だが?」


数多の貴族の中でランフォード侯爵家は水を司る一族としても有名だった。
国王陛下のご意見番を許された家柄なので、公爵家よりもは発言権は強いと言っても過言ではない。


その中でも最も優れた者は水魔法を使うのだ。
知らなかったとは言え、私は無礼を働き過ぎていたんじゃ。


「君の事は社交界でも聞いていたが、随分と無礼な令嬢であることは良く解った」

「そっ…そんな。私は知らなくて…」

「ほぉ?知っていたら無礼を働かなかったのか。君は公爵令嬢という立場を理解していないな…我ら高位貴族派常に周りの者に気を配らなくてはならない…私達の判断で人の人生を狂わせることができるのだ」

何時もふざけているスザンヌ様がマリアンヌを睨みつけ言い放ち、隣でロベルト殿下が厳しい言葉を浴びせた。

「君の気まぐれで、どれだけの人が不幸になるか…それを理解してないな」


どれも正論なのかもしれない。
私達は特権を与えられている以上、義務もあるのだから。

その義務を行使する責任がある。

悪戯に権力を使って許されるのではない。


「少なくともエリーゼは自分の私欲の為に権力を使おうとはしない。常に周りの者を大切にしている。君に彼女を罵倒する資格はない。身の程を弁えるんだな」

「くっ…」


スザンヌ様の言葉に圧倒されながらも、マリアンヌは私を睨みつける。


「一人では何もできない癖に…なんて浅ましくて卑怯なの!」

「マリアンヌ!」


怒りを私にぶつけ、そのまま部屋を出て行ってしまった。






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