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第二章
32.婚約者は歩く笛吹き~ロミオside
しおりを挟む俺は頭が痛かった。
前々からなんとく察していたが、学園に来てさらに彼女の天性の人誑しがレベルアップしてしまった。
「ハァー…」
「くくっ…あははは!」
「腹が痛い…本当に耐えられん!」
同じ寮で生活しているロベルトとスザンヌが行儀悪く腹を抱えて大笑いをしていた。
外でこんな真似をすれば誰もが仰天するだろう。
「笑うな…」
「そうですよ二人共…」
そう言いながら笑っているのは誰だ、ロナウド!
「まぁ、あれだな?パーメルの笛吹男みたいだな?笛を吹くと魔獣も人も精霊も寄って来る的な」
「恐ろしい事を言うな!」
パーメルの笛吹。
人外を惹きつける笛を吹き周りを懐柔したと言われている。
本人は悪気も他意もないのでかなり質が悪い。
「いやぁ、愉快だな!社交界では年配の貴族や老人からは好かれているからな。嫌うのは頭が悪い貴族や、若い連中だ…美しさだけで何ができるのか。本当に馬鹿だ」
「今回だけは同意しますよ、スザンヌ嬢」
大きな口を開けて大笑いするスザンナに同意するロナウド。
成人前までは美しいだけでちやほやされるも、成人して独立をしたら美しさだけでは生きて行けない。
特に次男、次女以下は自分の力で生きて行かなくてはならない。
令嬢の場合は姑と上手く付き合う為にも美しいだけでは生きて行くのは本当に難しかった。
「やはり彼女は実に良い」
「だろう?俺が見初めた姫だからな…お前に譲ったのが惜しいな」
「兄上が相手ではリゼが苦労しますよ」
さりげなく俺の婚約者を親し気に愛称で呼ばないで欲しいんだが。
「だが、お前も苦労するな。我が生徒会の問題児を虜にしているのだからな」
「は?」
「とぼけるな。あの神経質で貴族嫌いのスコットが勉強を見てやり、頭が筋肉でできているリオネルがとは親密だしな。ダークホースは彼女だろ」
「待て、俺の婚約者はそんな趣味は」
前半は嘆かわしいが、勉強が苦手なエリーゼをスコットが気にかけたのは解る。
口では厳しい事を言いながらも根は悪い奴じゃない。
だが、距離が近すぎる。
「スコットと放課後はデートだな?勉強会デート」
「くっ!」
「それに最近はリオネルと一緒に朝一番に炭を作ってるらしい」
一つ屋根の下で生活しているから親しくなるのは解る。
リオネルはあの通り面倒見が良いからな。
「俺もバッヂを捨てたい」
「馬鹿を言うな、お前はエリーゼが関わると本当にヘタレだな!」
スザンヌ。
友に対してそれはあんまりじゃないか。
俺の憂鬱な気持ちは張れることはなく夏休みを迎えることになるのだったが、夏休み中にもひと騒動起きることになるのだった。
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