78 / 311
第二章
25.近況報告~ジリアンside
しおりを挟む早いもので、エリーゼが学園に入学して三か月が過ぎた。
そろそろ長期の休みに入る頃、実家に帰ると手紙を貰い、安堵した。
長期の休みは実家で過ごし、半分は伯爵家で過ごした後にはクレセント公爵家。
私の実家で過ごすように手紙に書いておいた。
クレセント家は長女夫婦が後を継いでいる。
姉が跡継ぎとなり義兄は婿に迎えられているがとても仲睦まじい夫婦だった。
姉は私とは違い幼少の頃から体が弱かった。
子供も中々できなかった事を責め続けていた姉を見るのは辛かった。
けれど、そんな姉を慰めたのはエリーゼだった。
当初、私がエリーゼを身ごもった時は安産だったのだが、生まれてすぐはそれはもう大変だった。
あっちこっち転がって、使用人を困らせ泣かせることは多く。
歩けるようになったら今度は好奇心旺盛で手がかかって仕方なく、私とエリーゼの攻防戦が続いたのだけど、姉は常に優しくエリーゼに説き伏せた。
エリーゼも姉には大人しく聞かざる得なかった。
怒るよりも優しく説き伏せられる方が効果的だったのもあるけど、エリーゼと姉は相性が良かったようだ。
母も厳しい方ではあったけどエリーゼを可愛がってくれて、姉はエリーゼを我が子のように可愛がってくれて、私がハイネを出産する時も邸に来て上の二人を見てくれた。
三人を平等に可愛がってくれていても、姉はエリーゼを特に可愛がっていた。
その理由は、エリーゼの名付け親が姉であることもそうだが。
一時は自信を無くし、精神的に参っていた姉の心を支えてくれたのはエリーゼだった。
エリーゼの存在に救われたのは姉だけではない。
病弱で、子供も産めない体質の姉を見るのが辛かった母も父もエリーゼのおかげで姉が明るくなったことを心から喜んでいた。
だからこそ、エリーゼが馬に蹴られて傷物令嬢と噂を流された時。
普段温厚な姉が怒って大変だった。
王族に抗議して訴えるとも言い出していたので、正直ゾッとした。
今でも王族に思う所がある両親を安心させるためにも是非クレセント公爵家に行って欲しい。
ロミオ様と仲睦まじい姿を見ればきっと納得してくださるはず。
ただ問題は…
「ジリアン」
「旦那様」
頭を抱えている私はもう一つ問題があった。
「院長先生から手紙が来ている」
「またですか」
私は現在、次女の事で頭を抱える日々を送っていた。
エリーゼの事に手を掛け過ぎた所為なのか、それとも私の育て方が悪かったのか。
非常に悩んでいた。
「あまり気負わない方が良い」
「ですが旦那様、私の教育が間違っていたのかもしれません」
カトレア修道院。
由緒正しき修道院で院長先生は元高位貴族でもあり、多くの貴族の行儀見習いを受け入れておられた方。
厳しさと優しさを持ち合わせる方で、淑女の神様とも呼ばれていた。
あの方ならばと思いマリアンヌを預けたと言うのに。
修道院ではマリアンヌが度々問題を起こす為、どうしたものかと頭を悩ませていた。
48
お気に入りに追加
8,972
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
全てを諦めた令嬢の幸福
セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。
諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。
※途中シリアスな話もあります。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!
ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。
全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。
言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。
食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。
アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。
その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。
幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる