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第二章
3.謎の美少女
しおりを挟む私は思わず少女の手を掴んだ。
「すごいわ!貴女は治癒魔法が既に使えるの?光魔力の保持者だけでなく、こんな高度な魔法まで!」
実際に魔法を見ることはあった。
でもここまで王道なファンタジー的な魔法は初めてだった。
「あっ…あの」
「魔力の使い方を学びに来る学園で既に自在に使えるなんてすごいわ。よっぽど厳しい訓練を受けたのね。素晴らしいわ!」
魔力があろうとも使えるかは本人次第。
例え精霊の加護を持っていても訓練しなくては使えるようにならないとも聞かされた。
私なんてしょぼい魔力でも発動するのにどれだけ時間がかかったか。
「ごめんなさい。失礼な事を。私はエリーゼ・トリアノンと申します」
「私はサーシャです。サーシャ・ラースです」
「よろしくお願いします。一緒に合格できるといいですね…いや、ラースさんは確実に合格できそうだけど」
私はかなり危ないんじゃないか?
「あの…もしや自身がおありではないのですか?」
「まったくありません。特に理系の筆記試験が危ないんです。実技も悲惨ですが」
私ってば会って間もない人になんてことを!
「なんかすいません。こんな…恥ずかしい」
「いいえ、私も苦手な科目があって…良かったら試験まで一緒に」
「お願いします!」
「あっ…はい」
私はこの時、彼女はどんな思いだったとか、どんな表情をしていたのか知りもしなかった。
これまで真面な交流関係を築けていなかったこともあるが、もしかしたら学園に通う前に友達になってくれるんじゃないかなんて淡い期待を抱いていた。
「ラースさん、師匠様と呼ばせてください」
「え?」
「貴女は天才です。そして私は馬鹿です。どうかご教授を」
入試前に二人教室で勉強をしたが、なんてことだ!
ラースさんはとにかく優秀だった。
ありえない程教え方が上手かった。
前世から私の天敵である数学を解りやすく解説し、数学学者を現世で散々泣かせていたのに。
「解りやすい。すごく解りやすいわ…貴女は先生よりも教えるのが上手だわ。絶対上位で合格だわ」
「そっ…そんな」
「魔力だって高いし、絶対新入生代表に選ばれるわ」
勉強ができても教えるのが上手いとは限らない。
でもラースさんは私がどの程度理解しているかを見た上で解らない所を丁寧に教えてくれた。
「打倒関数!なんとしても合格よ」
「頑張ってください」
「ありがとうラースさん。同じクラスだといいわね」
「はい」
ああ笑顔が眩しい。
天使のような微笑みに私は胸がキュンとしてしまった。
勿論筆記試験は、問題なく解くことができた。
まぁ実技は自身がないが――。
その翌日結果が届いた。
ギリギリだったけど合格できたことには違いないので一安心した。
でもその夜。
「なーんか忘れている気がするのよね…なんだろ?」
大事な事を忘れている気がした。
そしてベッドに横になると。
「ん?光の魔力を持つ美少女…え?」
私はベッドでゴロゴロしながらようやく思い出した。
「あああ!」
私は後になって気づく。
恩人はヒロインであることに。
「エリーゼ、何を騒いでいるの!」
「お母様…」
「貴女って子は!」
知らずにヒロインと出会っていた事に気づき悲鳴を上げるも、夜に騒いでしまった事でお母様にお説教を受ける羽目になるのだった。
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