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第一章

38.自慢の姉様~ハイネside

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エリーゼ姉様がスチュアート伯爵家に滞在するようになって三か月。
正式な婚約を結んでからようやく実家に戻って来た姉様が帰って来たのを喜んだ。


「お義姉様!」

「ナタリー」

「お待ちしておりましたわ。ずっとお戻りにならず手紙だけだったので心配しておりました」

ナタリーも実家に戻らない姉様を心配していたが、姉様の事だから大丈夫だと確信していた。

「お噂を聞きましたわ。スチュアート夫人のご病気を治されるなんて素晴らしいですわ」

「たいしたことはしてないわ。それに伯爵家の使用人の方や懇意にしている商会の皆様の助力だから」

「本当にお義姉様は控えめですわ…誰かさんと多い違いですわね」


うん、名前を出さなくても解るよ。
一時、姉様が伯爵家に滞在するようになり噂が流れた。

あの事件で顔に傷を作る人前に出れない程醜くなり、公爵家からも見放されたのではないかと。


伯爵家も災難だと噂を流され、醜い婚約者を人前に出したくないので邸かた出ないようにしているのでは?と言う始末。


元から姉様が貴族達の自慢大会に参加するよりもサロンに参加していた。
参加者年配であるが勉強を見て貰ったり芸術に触れて音楽も学んでいたり異文化を楽しんでいた。

我が公爵家では他国の文化を学ぶのはどうしても必要だ。
特に外交をするゆえに異教徒を学んでおかないと大変な事になる。

だからこそ姉様は率先してサロンで学んでいたんだ。

なのに――。



「舞踏会にも出ないで遊び歩くなんて、本当に恥ずかしいわ」

「ええ、あのような場で学ぶ物はないというのに」


決まってあの二人は姉様の悪口を言っていた。
別に遊び歩いている訳じゃないのに、どうして決めつけるのか。

舞踏会やお茶会で自慢大会をしている方が時間の無駄だ。
確かにある程度は必要だと言っていたけど、姉様がサロンて勉強するのは父様が姉様に望んだ事だ。


多くの事を知り、学び、僕を支えて欲しいと常に言っていた。
僕はまだ幼いし、天才だと言われているけど姉様ほど向学心王政ではないし、人見知りする傾向がある。

その点姉様は気難しい高齢の貴族とも打ち解けるのが上手かった。
だからこそ、貴族令嬢としての役目はマリアンヌ姉さんがすればいいとおもっていたはずだ。

マリアンヌ姉さんの欠点は姉様が補ってくれているのに、気づこうともしない。

挙句の果てに自分が嫌だからと言って姉様を身代わりに婚約者にしたんだから。
でも、今は良かったと思う。


「姉様、スチュアート家はどう?」

「皆さんとてもお優しいわ。すごく良くしてくださるのだけど…少しやり過ぎというか」


「お召しになっているドレスはもしや、伯爵様が?」

「何着もあるのに、同盟国に視察に行ったときに似合うだろうと…」


慎ましやかな生活が慣れている所為か、毎回のようにドレスを新装されて疲れているのだろうか。


「ですが、とってもお似合いですわ。東帝国の装いですわね…とっても煌びやかで」

「ありがとう。少し着なれないけど」


絹でできた生地に銀糸があしらわれてる。
絹のドレスは中々手に入らず効果だから、伯爵家の財はすごいのだと思わせられる。

高位貴族でも絹のドレスを買えるわけじゃないのに。

何より姉様をそれだけ大事にしている証拠だ。

一時はどうなるかと思ったけど本当に良かった。





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