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第一章
35.伯爵家の敵~ロミオside
しおりを挟む母さんが元気になり、社交界に顔を出す様になり悪い噂は消えて来た。
シルビアに対する噂は未だに残っているが、以前よりも綺麗になった母さんを羨む人は多く、懸想するも不届き者も現れるも、常に父さんがいるので問題ない。
それどころか、父さんとの仲睦まじさ強くなった。
病気の所為で弱腰になっていた母さんは以前のように強くなった。
全てエリーゼのおかげだ。
だが、その一方で最近邸内でエリーゼが疲れた表情をしている。
無理をしているのは解る。
それにお茶を飲む回数が増えたようにも思う。
別にお茶を飲むのは良いのだが、飲んでいるのは薬草を使ったお茶が多い。
疑問を感じたが、無理に問いただすことはなかった。
しかし夕食の時に見てしまった。
ベッキーがお茶を淹れなおした時に微かにお茶の色が濁っているのを。
そして無理をして飲んでいたのを。
翌日の夕食もお茶に何か淹れているのを見たのだ。
「ベッキー、悪いが俺にもお茶をくれ」
「かしこまりました」
だから確認をすることにした。
「同じので良い。淹れなおす必要はない」
「えっ…ですが」
ポットを変えて淹れなおそうとするベッキーの態度はおかしいと思い、カップを奪う。
「ロミオ様!」
ベッキーが声を荒げた。
そして飲んだ瞬間喉に激痛が走った。
「うっ!」
「お兄様?」
「ロミオ様!」
「ロミオ!」
何だ、このお茶は。
喉に強い痛みが走り、後味が酷く感じる。
「ロミオ様。お水を」
「すまない…」
エリーゼが水を差しだしてくれたのですぐに痛みは止んだが、ベッキーの顔は強張っていた。
「どうしたんだ…」
「お待ちください旦那様…」
「何だこれは!」
父さんが飲みかけのカップを手に取り、一口飲むと口を押えた。
「こんなお茶を…ベッキー!どういうつもりだ」
「私は…」
「君は侍女をして何年になる!こんなお茶を淹れるとは…茶葉が腐っている以前の問題だ。毒ではないようだが、飲めたものではない」
「まさかエリーゼ義姉様にずっとこんなお茶を出していたの?なんて事を」
「ベッキー、どうなの?はっきりおっしゃい」
ずっと違和感を感じていた。
母さんの傍仕えをするベッキーは親切心を振りかざしながらも無神経な言葉が目に付くし、エリーゼに対して厳しいとも思ったが、何度もエリーゼの為と言っていた。
だが、明らかに攻撃的だった。
俺がいる目の前ではエリーゼに危害を加えないようにしたが、ずっと傍にはいられない。
そんな最中、エリーゼが最近手に怪我をしていた。
本人は何も言わず、マナーレッスンの時もベッキーはあまりにも厳しいレッスンをしていた。
そのことをそれとなく父さんに伝え様子を見ようとも思ったが、もはやそんな悠長な事は言っていられなかった。
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