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第一章
24.悩まし気な公爵閣下①
しおりを挟む私の名前はミケル・トリアノン。
トリアノン公爵家の当主であり、領民と家族をこよなく愛する貴族だった。
私には愛しの妻と可愛い子に恵まれ、本当に幸せだった。
ただ、憂い事があるとすれば、私の愛娘が社交界から爪はじき状態にある事と、誤解を受けていることだった。
私の可愛いエリーゼは、本当に良くできた娘だ。
妻のジリアンはエリーゼに手を焼いているが、私からすれば素晴らしい娘だと思っていた。
魔力が低い等、たいしたことではない。
あるに越したことはないが、ないからと言って困る事ではないのだ。
人の価値は、魔力、血筋、家柄で決まらないと言うのが私の持論だった。
私も魔力が少ないからこそ言えるのだが、だが貴族接待主義、魔力絶対主義の貴族からすれば受け入れられない者も多かった。
未だに魔力がすべてと判断する高位貴族派少なくないのだ。
その所為で私の可愛い娘は肩身の狭い思いをして、縁談が中々決まらなかったのだ。
しかし、誤解がある。
別に婚約の打診がないわけではない。
王族や他国の高位貴族からの縁談の話はあったのだが、何を誤解したのか周りが勝手に縁談が来ないと勝手に言う者がいた。
一番不愉快だったのは縁談相手はマリアンヌに懸想したとか。
マリアンヌの方は縁談話が引手数多だと言う噂が流れていたが、実際は違う。
マリアンヌが他国から声を掛けられたのは、エリーゼの妹だからだ。
エリーゼは国内では肩身が狭くとも国外ではそうではなかったのだから。
なのに何を誤解したのか。
それに関してはマリアンヌの傍付きの侍女も問題だった。
あれは何かにつけてエリーゼを批難していた。
公爵家の名誉を第一に考えていると言っていたけれど、少し行き過ぎな所もあった。
それとなく注意するも改善できずにいた。
しかし、マリアンヌの幼少期からの傍付きをしていた故に大目に見ていたのだが。
少々エスカレートしてしまった。
特にエリーゼの傍付き侍女のランとは折り合いが悪かった。
ランは清の国の出身で、私が直接スカウトをした優れた侍女だった。
我が公爵家は外交をしているので他国の事を知る侍女が傍仕えとなれば、エリーゼの将来の手助けとなると思ったからだ。
ランは武術の達人であるだけでなく優れた師で薬草にも詳しく博学だったことからエリーゼも興味を示し、貴族令嬢として必要ではないスキルを身に着けるようになった。
私は貴族令嬢としての生き方以外にも道があるなら、好きにさせてやりたいと思った。
幸いにも跡継ぎにはハイネもいるから長女だからどうこうする気はなかった。
何よりこれからの世の中は、己の才能を伸ばし、独立して行かなくては生きて行けない。
貴族も平民も関係なく、自分の手で未来を切り開く力が必要だとも考えていた私の思いをエリーゼは汲み取ってくれていた。
だから私はあの子を信じていた。
ただ、妻は娘に甘すぎると怒っていたが。
しかし、姉妹仲が不仲だと言う噂はどうにかしたかった。
別にエリーゼはマリアンヌを嫌っているわけではないし、険悪ではない。
ただマリアンヌは少しばかり我儘に育ったのは事実であるが、エリーゼを憎んでいるとは思っていない。
態度には問題はあるが、成人してちゃんと学んでくれればと思っている。
マリアンヌに限った事ではないが、温室にいる令嬢は我儘なのはマリアンヌだけではないのだ。
そう思っていた。
マリアンヌを信じていたのだが、私は少々あの子を甘やかせすぎたのだと今は反省している。
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