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第一章
23.勘違いの始まり
しおりを挟む勘違いというのはすごいものだ。
そして人は誤解を生んでその誤解は更なる誤解を生む。
そう誤解なのだ。
「本当にありがとう。エリーゼ嬢…いや、エリーゼ」
「あっ…あの」
「妻の病を治してくれて。私はこの日をどれだけ夢に見たか。また妻が元気になる事だけが願いだった。その願いを叶えてくれて」
涙ながら手を握られ眩暈がした。
「いっ…いえ、サブリナ様が頑張られたので」
「君は本当に謙虚だね。セバスチャンからすべて聞いたよ。君は素晴らしい知識を駆使して妻を救ってくれたのだと。他の医師が思いつかない治療法を見つけるとは」
(いや治療というか、食事療法とリハビリしただけです!)
この世界にはまだ知られていない治療法と食事改善をしただけにすぎない。
特にサブリナ様の病は脚気に近しい病で、食事も病状を悪化させるようなものばかりだっただけだ。
「しかしどうやってあんな食事療法を」
「私は根っからの食べることが好き何で…」
「お嬢様!」
まずい、本音がポロリと出た。
「うむ、なるほど…食か」
「その、幼少期から父に色んな国の美味しい物を食べさせてもらっていたので」
嘘はついていない。
小さい頃から視察で外交もしていたので様々な食べ物を足せさせてもらった。
サロンでも他国の出身や商人が変わった食材を見せてくれたので、食べまくった。
ちなみに前世でも食べ歩きが趣味だったけど。
「お嬢様、そのような事を申してはなりません」
「ごめん…ラン」
食べることが大好きな私をお父様は喜んでくれた。
でもお母様は外では食い意地が張っている事を隠した。
第三者からして恥ずかしいのだろう。
「そうか食事か…確かに美味しい食事は大切だ。私もしばらく美味しいと思う食事は取ってないな」
「貴族の食事は毒見をしてからお出ししますので…特に王宮の食事は冷めております」
公爵家では毒見をするも、すぐに出すのでそこまで冷めることはない。
でも他所の邸はそうなのかもしれない。
「貴方、私は久しぶりに食事が美味しいと思いましたの。そして食事とは一人で食べるよりも大勢で食べるのが本当に美味しいと知りましたわ」
「サブリナ…」
「病気故に、ご一緒するのは難しいと思ってましたが…私は昔のように家族で食事をしたいですわ」
「お父様、私もです」
二人はずっと寂しかったのかもしれない。
「そうだね。これからは三食一緒に食事をしよう。昔のように君とお茶をしたかったんだが、負担になると思ってね」
「貴方!」
「私も君ともっと食事がしたいよ」
互いに気を遣うがゆえに少しだけすれ違っていた。
でも二人は本当の意味で繋がっていた。
ふと私に殺意を向ける視線を感じた。
(睨んでいるわね…)
私に敵意を向けるあの侍女。
でも、アンタの好きにさせてやる気はないわよ。
底辺と呼ばれた私でも意地はあるのよ?
優しい彼等が不幸になることは許さない。
幸せな家族を壊す権利は誰にもないのだから。
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