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第一章

20.優しいお嬢様~セバスチャンside③

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私は一言お礼を申し上げく思い、エリーゼお嬢様の通われるサロンに向かいました。


しかし、そこで聞いたのはエリーゼお嬢様が不遇な扱いを受けている噂話でした。


「お可哀想ねエリーゼ様」

「ええ、魔力がほとんどないばかりに…社交界では心無い噂に傷つけられて」

「逆に妹君が姉君を悪しざまに扱っている所為で更に悪い噂が流れているわ」


なんということでしょう!
シルビアお嬢様を助けてくださったエリーゼお嬢様は魔力がほとんどなく社交界では笑いものにされていると言うのです。


「見た目が華やかなマリアンヌ様が好まれるからと言ってもドレスも姉気味よりも目立つのを選ばれているそうですわ」

「侍女も何かと妹君を持ち上げているとか…」

「魔力だけ強くても淑女として優れているなんて解らないと言うのに」

「そうですわね?エリーゼ様はパーティーや華やかななのは得意でありませんが博学で勉強熱心ですわ」

柱の陰でエリーゼ様は公爵令嬢でありながらツライ立場にいることを知りました。



ああ!なんとお労しいのでしょう。
ご自分が辛い立場にあるからこそ、弱い立場の方にもお優しいのですね。



「おいセバスチャン、何で泣いているんだ」

「坊ちゃま。セバスチャンは悲しゅうございます」

「は?」


邸に戻っても涙が止まりまらず部屋で泣いていると、ロミオ様にハンカチを差し出されました。


「エリーゼ様が気の毒で」

「ああ、彼女か…」

何故か深いため息を付くロミオ様。

「今は気づかない者がいるが、いずれ解る者が現れるさ…それに彼女は公爵令嬢だ。いずれ王族と婚姻を結ぶだろう」

普段は色恋に興味を持たないロミオ様がため息を付きながら花を見ていました。


その花はエリーゼ様から送られた花。


「気づかない連中は馬鹿だ。彼女はあんなに魅力的なのに…だが気づかれるのは嫌だ」

「坊ちゃま…」

何と言う事でしょう。
ロミオ様はエリーゼ様を恋い慕っていらっしゃるのですね?

まだ六歳だと言うのに!


しかし相手は公爵家で坊ちゃまは伯爵家の子息。
サブリナ様の時とは訳が違いますのです婚姻はとても難しかったのです。


それから数年、ご友人として親しくお付き合いする中坊ちゃまが12歳の時、エリーゼ様が11歳の時でした。


第一王子殿下ロベルト殿下との婚約を耳にしました。
まだ正式に婚約式はしておりませんが、身分からしても申し分ないと思ったある日。


ロベルト殿下と話しているのを聞いてしまいました。


『お前、エリーゼが欲しくないのか』

『ロベルト…』


何と言う事を言うのでしょう。
ロベルト殿下はロミオ様の気持ちを知って言うのですか!

『このまま行けばエリーゼは俺の妃になる。俺は側妃を持つ気はないし、妃は彼女一人で十分だ。お前は惚れた女が他の男の物になってもいいのか?』

おのれぇ!ブラコン変態王子が!

私はこの時本気で殺してやりたくなったのです。

『欲しいなら奪え』

『何を…』

『エリーゼ嬢が欲しいなら、妻にしたいなら手段を選ぶなと言っている。この俺から掻っ攫う覚悟ぐらい見せろ。俺とて、親友の初恋を壊すような無粋な真似は望んでいない…が、エリーゼ嬢の立場を守るには必要だ』


もしやあのブー王子…ではなく、ロベルト殿下は解っていたのでしょうか?

ロベルト殿下の発言により、ロミオ様は覚悟を決めたのでした。

そして元老院の無理難題をクリアしましたが既に時が遅かったのです。
正式に婚約が纏まった後だったのですが、その直後に事件が起きたのです。


王宮内の馬場でエリーゼ様は馬に蹴られて大怪我を負ったのでした。

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