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第一章
19.優しいお嬢様~セバスチャンside②
しおりを挟むきっかけは王族主催のお茶会でした。
通常のお茶会には参加しないシルビア様ですが、王族の主催となれば参加しないわけも行きませんでしたが。
そのお茶会で、他の令嬢がお嬢様口にできないお茶をわざと飲ませたのです。
「うっ…」
「やだ!なんて汚いの!」
「お茶も飲めないなんてやっぱり化け物よ!化け物は消えなさい」
普段から食が細いお嬢様はお茶も厳選していました。
後から知りましたが、お嬢様のお茶はわざと渋くして飲めないようにしていたのですが、当初は気づけなかったのです。
大勢の令嬢や子息に囲まれながら苦しむお嬢様にかけよりたくても、相手は貴族。
押しのけて行けば、お嬢様の立場が悪くなると思いできませんでしたが。
これ以上は黙っていられませんでした。
「ベッキー、早くお嬢様を」
「なりません。この程度一人で対処できないなど…伯爵家の名に傷がつきます」
「ベッキー!」
この時私は気づきました。
ベッキーは気づいていたのではないのか?
気づいていなくともお助けしようとしなかったのではないのか。
微かに口元が笑っているように見えたのです。
その時だった。
「大丈夫ですか」
お嬢様に駆け寄る一人の令嬢が現れました。
「うっ…」
「顔色が真っ青です。お使いになってください」
「でも…」
同年代ぐらいの令嬢でしょうか?
ドレスは派手さはなくも上質な物でした。
「ちょっと、何よ貴女!」
「何か?それよりも早く医師を呼んでください。もしや毒でも盛られたのかもしれません」
「はぁ?毒ですって!そんな訳ないでしょ!」
いきなり現れた令嬢に、お嬢様を責めていた令嬢が怒鳴るも。
「だって、いきまりお茶を飲んで苦しまれて…もしやお茶が古かったのかしら?不良品だったのでは」
「なっ…この茶葉は我が家の特産品よ!そいつのお茶は飲めないように渋くしてただけ…あ!」
怒りに勢いを任せて墓穴を掘った令嬢に周りの視線は冷たくなる。
「なんて酷いことを…彼女は体が弱いと聞きますわ。何故そんな非道な事をなさるの?」
「私は悪くないわ!アンタこそ何処の誰か知らないけど、身の程を…」
「どうしたんだい」
お嬢様を庇ってくださった令嬢が今度は責められそうになっていた時でした。
お一人の男性が現れる。
「何を騒いでますの」
隣には社交界では知らない人はいない程の有名なご夫人。
「トリアノン公爵夫妻!」
そうです。
公爵家の中でも名門中の名門でどの派閥にも属していないながらも他国にもコネクションを持つトリアノン公爵様とその奥方が現れたのです。
「お父様、お母様!」
「は?」
さっきまでふんぞり返っていた令嬢は真っ青になりました。
当然のことながら、トリアノン公爵家は高位貴族、他のご令嬢は伯爵家か子爵家なので。
「まぁ、どうしたの?」
「もしや、彼女はスチュアート伯爵家のご令嬢かな?体が弱いのに…何故こんな香りの強いお茶を。誰が出したんだい?子供に飲ませるお茶じゃない」
「まぁ、なんて酷い事。後で咎めなくてはいけないわね」
その後は、お嬢様に嫌がらせをした方達は厳しく咎められました。
勿論そのご両親をトリアノン夫人は人睨みさせて脅したとも噂されております。
お茶会から数日後、トリアノン家から丁寧な手紙とお嬢様を気遣う贈り物が届きました。
ずっと一人ぼっちだったお嬢様は他人の優しさに初めて触れた瞬間だったのでしょう。
とても嬉しそうにして、笑う様になりました。
それからでした。
我が伯爵家に光が立ち込めたのは。
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