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第一章
17.侍女への疑惑
しおりを挟む長い間、サブリナ様を苦しめていた病は不治の病ではなかった。
初期症状を聞くと、食欲不振に手のしびれや倦怠感等から始まり、足元が覚束なくなっていた。
まるで脚気に似ていた。
私は前世でも脚気に苦しむお年寄りを数えきれないほど見て来た。
その為食事には玄米を使用した。
まだこの国では米は食料として親しまれておらず、特に玄米に全粒粉はマズイと言われていた。
貧しい平民の間では飢えの為仕方なく食べていた。
けれど、前世でも糖尿病に苦しむ患者に糖分制限をされた患者等は玄米を主食にしてカロリーを抑えていた。
脚気には救世主な食材だったし、調理法を考えれば美味しくなるのだから。
「今日の朝食は玄米のロールパンに豆乳スープです」
「まぁ、美味しそうね」
「エリーゼ様、こちらのスイーツはなんですか?」
「豆乳で作ったババロアよ」
プリンやゼリーは存在してもババロアは存在してないのだが、見た目が似ているので受け入れられた。
「まぁ、美味しいわ」
「このババロア、昔私の為に作ってくださったカボチャのプリンに似てます」
「まぁ、シルビアが拒食になった頃ね」
「はい、何を食べても嘔吐してしまって。それでエリーゼ様が私の為にカボチャのプリンを作ってくださったんです」
もっと幼い頃、食が細く何も食べることができなかったシルビアに何か食べられる物はないか考えた末。
シルビアは甘いプリンが大好きだった。
ならカボチャのプリンにしてみればどうだろうかと考えた。
カロリーもあるしカボチャは体に良かった。
案の定食べてもらえたのだけど。
「今まで食事がこんなに楽しいと思ったのは何時以来かしら」
「私もです。お父様とお兄様がいらっしゃるときはまだよかったのですが…」
「食事とは大勢で食べるともっと美味しくなります」
まぁ私の場合は楽しい食事の後にお母様のお説教が待っているのだけど。
「もうすぐお父様とお兄様がお戻りになります。お願いしたら一緒にお食事してくださるかしら」
「けれど…」
宰相として多忙なユアン様を気遣っているようだけど、食事も一緒にできない程多忙なのだろうか?
我が家では食事は一緒にしていたし。
「ベッキーが…」
(またあの侍女か!)
シルビアの表情を見てさらに怒りが込み上げて来た。
一体あの侍女は何をしたのか。
私のような落第令嬢ならいざ知らず、一族の中でも魔力の強いシルビアを侮辱する事は一族を侮辱する行為だと言うのに。
何がしたいのかまったく解らな…くもないような。
でも、まさかとは思ったのだけど。
「お嬢様」
「ラン…」
当たって欲しくないけど確かめた方が良いかもしれない。
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