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第一章
5.姉としての心配
しおりを挟むしばらくスチュアート伯爵家にお世話になる事になった私は怪我の様態も良くなって来た。
昔から傷の治りは早かったし、前世でも薬要らずの体質だった。
まぁ、田舎育ちだった私は基本、薬は飲まずに寝て食べて治す古すぎる治療法をしていた。
転生後も同様に規則正しい生活を送っていたので幼児の頃から病気になるこちはなかったけど、逆にマリアンヌは体が弱かった。
だからこそ、少し過保護に育て我儘に育ったのは仕方ないかもしれない。
けれど、お父様とお母様は差別していなかったと思う。
病気の妹に付きっ切りになるのは仕方ないし、その当時から私は前世の記憶を取り戻していたのだ。
だから寂しいとは思わなかったし、まだ幼児だったハイネの面倒を私が見ていたので寂しいと思う事はなかった。
通常ならば使用人がハイネを見るのだけど、使用人ではすぐぐずり出すので私が一緒にお世話をしていたというわけだ。
それを見たお父様は大変喜ばれたそうだけど。
その所為かハイネは私にべったりと懐き、家族の中で誰よりも私を慕ってくれた。
ただ、マリアンヌとは折り合いが悪かった。
「邸であの二人は大丈夫かしら?」
常に私を挟んでいたから、今まで言い争いは最小限だったけど。
でも、マリアンヌの目下の悩みは私だったのだから。
私がいなくなれば嫌味を言う必要もないし、不仲だったナタリーとも仲良くしてくれるはずだわ。
ナタリーは私を慕うあまり、マリアンヌに対していい感情を頂いていない。
マリアンヌも伯爵令嬢であることを下に見ていたけど、ちゃんと二人で話し合えば大丈夫なはず。
(大丈夫…よね?)
ナタリーは少しばかり気の強さはあれど根はすごく優しく思いやりのある子だし。
私が色々心もたないのに、親身になってくれたし。
パーティーでも私を貶す令嬢から守ってくれた思いやり溢れる優しい女の子だ。
だからちゃんと話せば大丈夫なはず。
「お嬢様、どうなさいましたか?」
「少し家の事が気になって」
「まぁ、お嬢様ったら」
ランは困った表情をするも、やっぱり心配になるのだ。
「お嬢様が心配なさることは…」
その時だった。
ランの言葉を遮るようにしてノックの音が聞こえる。
「お待ちくださいお嬢様!なりません!」
扉の向こうが側が騒々しく感じた。
スチュアート伯爵家の使用人が慌てているようだった。
「どうしたのでしょう?」
「ええ」
基本、この邸の使用人は優秀な人材ばかりで、侍女は外交官の息女や官僚補佐の子息等で優秀な方ばかりだった。
なので足音を立てたり、声を荒げるのは珍しいと思った最中、風が吹いた。
(これは…)
自然の風ではなく魔力だった。
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