婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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137我慢

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我慢だ。
耐えるんだ。

この程度の事で癇癪を起してはならないと必死で言い聞かせるもこの男は薬の効果が出て来たのかペラペラ話し始める。


「所詮は平民。あれらが私達と会話すること自体愚かなのです」


「エスカルダ侯爵…」


傍にいる貴族が流石に言い過ぎだと止めようとするも、私は制止する。


「閣下は随分と平民を良く思っておられませんね。我が国の官僚の半分は下級貴族や平民が多いというのに」

「元貴族ならばまだしもあのような屑が王宮勤めなれたのも間違いですな。侍女にいたっては所詮腰掛にすぎません」

「腰掛…」

「ああ、あの男は王妃陛下の腰巾着ですな。ですがボロボロの腰巾着ですが。ハハハッ!」


この会話は会場中に広まっている。
今夜の会談は各領地の代表だけでなく、他国の勅使も参加している。


にも拘らずべらべらとしゃべりだす。


「そうですか…確かに生まれは異なりますからね」

「そうでしょう。そうでしょう?生まれが疑わしいの野良猫が王家にもおりますからな」


ようするに。妾腹の子供の事を言っているのか。
この男は正気か?


国の高位貴族のほとんどは正妻以外から生まれた者が多い。
子は授かり物だ。

産みたくても産めない女性が多いんだ。
にも拘らずこんな乱暴な物を言いをするとは言語道断。


「所詮子が産めぬ女は役立たず。誰のおかげで食べて行けていると思っているのか…なぁブルボン伯爵」

「そうですな!…えっ…」


隣にいる側近が頷きながらもすぐに真っ青になる。
こちらも薬が効いて来たようだな。


「ほぉ?二人はそのようなお考えをお持ちですか」

「当然です。生まれがはっきりしない人間を傍に行くなど正気の沙汰ではありません。シオン様は生まれながらにして不幸でしたからな。兄君に何かも奪われ、あんな姫と無理矢理婚約させられて哀れに思っておりました」


この男、腹の中でこんな事を思っていたのか。


「シオン、今は耐えるべきだ」

思わず懐にしまっている短剣を握ってしまったがチャールズが止めてくれて助かった。


「この後よろしかったらお時間はありますかな」

「何か?」

「実は私の姪が年頃でしてな。よろしければ会っていただけませんか」

「喜んで」


魂胆が丸見えだ。
だがここで作戦に乗らなくてはならない。

「チャールズ」

「気をつけてくれ」

合図を送り私はその誘いに乗るのだが周りにいる部下の動きがこれ見よがしだったが、ここで作戦を実行する為にはいたしかたない。





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