婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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135助言~リディアside

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厳しい言葉を受け入れながらも私は元より戻る気も後悔する気もない。


「ここが分岐点です。戻るなら間に合うでしょう。守られて大事にされて汚い水を飲む前に」


「ラインハルト様、私を見くびる過ぎですわよ」


先程からわざと私を挑発するような言葉ばかり使っているけど、随分甘く見られたものだわ。


私はシオン様と生きる道を選んだ時点で平穏で守られるだけのぬるま湯につかる気はないのだから。


「待つだけの日々は残酷ですわ。私はもう籠の中の鳥ではありませんわ」


「貴女の代わりに黄金の鳥籠に彼が入ってますが」

「私が壊します」


シオン様を籠の中の鳥にさせない。
他の大臣達の傀儡にもさせる気もないのだから。


「その体で何ができると」

「あら?真の悪人とは自分の手を世ござす傍の物に命じて高みの見物をする者ですわ」


子供の時間は終わり。
そう、この魔の巣窟に戻ってきた時点で私は毎日が‥


生きるのが戦いになるのだから。


「聖女のままでいられなくなるでしょう」

「そもそも聖女とは人々が作り出した者ですわ。私は自分が聖女だと名乗った覚えはありませんわ」


聖女と悪女。
天使と悪魔。


相反する存在だけど、この二人は似ているのかもしれない。
人の主観によって変わるのだから。


「今の私が悪女に見えるなら結構。そもそも私は聖女になろうとか、なりたいとも思っていません」


守る為に己の手を汚す覚悟はできている。


「どんな苦しみを耐えると?」

「ええ…」

「例えシオン殿が汚れても」

「馬鹿を言わないでください。汚れるとは何です?」


人を殺す事?
それとも役目の為に意に沿わない相手と体の関係を持つ事?


「心が汚れてなければ…その人の誇りが守られているならば綺麗のままですわ」


綺麗事を言うつもりはない。


それでも役目の為に命を懸ける人がいる。
未来を捨てきれず友の為にすべてを捧げているディアッカ先生が汚れている?


ふざけないで。


「汚いのは私欲の為に理不尽な真似をする愚か者。そして国に尽くす者を侮辱する者です。国の為にすべてを捧げ人を殺めたとしても私にその方を責める資格はありませんわ」


だってそうでしょう?
国のために生きろと命じているのは王なのだから。


私欲のためではなくあくまで国の為というのならば猶の事。


「ラインハルト様、お力をお貸しください。国を守る為です。そのためなら私は本当の悪女になりますわ」


「やれやれ…ここまで言われたのなら致し方ありません」


嘘つきな人。
私を溜めそうとしておきながら最後まで逃げ道を用意する。


甘すぎますわよ。


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