婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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132甘さを捨てて

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私は今回の計画の詳細を少人数にしか告げなかった。


「シオンよ、良いのだな」

「はい」

「強引な真似をすれば、情けをかけた貴族からどんな目で見られるか」

「全て承知の上です」


本来ならば最初からこうすべきだった。
私への悪意がディアッカに行くようにして、リディアとの婚約中も結婚式が終わった後も同様だった。


「私は守られ過ぎたのです」


「そうか…私が言えた義理ではないが」

「はい」

「あまり自分を追い込むでないぞ」


陛下の優しだである事は解っている。
だけどもう私がするしかない。



「シオン様、お父様とのお話は終わりましたの」

「ああ、すまなかったな」


私の立太子が終わってから忙しかったので二人で過ごす時間はないに等しかった。
夜部屋で過ごす時間もなければ日中も執務と、王太子としての教育に振舞わされていたのだ。


「いいえ、このところ睡眠時間もあまりなかったようですし」

「大丈夫だ」


多少の無理は当然だ。
私は中継とは言えど、甘えは許されない。

血筋の問題もあるが、慣れて否から仕方ないなどということはありえないのだから。

「最近、無理をし過ぎているのでは」

「この程度無理ではない。騎士になりたての頃はもっと大変だった」

そうだ。
士官学校を出て直ぐの頃の訓練の方がもっと厳しかったのだから。


「最近ディアッカ先生の姿も見ませんし」

「仕事だ。アイツは王妃陛下の直属の側近で国外にも向かう事が多い」

「それだけならいいのです」

不安そうなリディアの表情。
言わなくても鋭いから何かを察しているのだろうか。


「ここ数日のディアッカ先生の様子はおかしいですわ。こんなに頻繁に王都から出て何かを調べているようで…なんというか…言葉にはできませんが」

「そうか」

「シオン様、本当に何もご存じないのですか」

「え?」


リディアは食い下がる。


「ディアッカ先生はおふざけが多い方ですが慎重な方です」

「そうだな」

誰よりも知っている。


「そのディアッカ先生が何かに焦っているように見えますの。それに最近はニナを弄る事もなさらないのです」


ディアッカ…お前の素行の悪さの所為か。
リディアからの評価が何とも言えないな。


だが、ここまで余裕を無くしているということか。


「私はディアッカ先生にこれ以上負担を強いたくないのです」

「君の心配は杞憂に終わるさ」

「シオン様…」


ここまで思われているのにどうして気づかないのだろうか。

ディアッカ。


お前は馬鹿だ。

大馬鹿だ。


私も馬鹿だがもっと馬鹿だ。


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