143 / 169
128不幸な最中~サンドラside②
しおりを挟む邸の中にいたくない。
そう思って外に出ても誰も私を見ようとしない。
酒場に入っても突き刺さるような視線を向け。
男とをひっかけようとするも。
「馬鹿言わないでくれ。王族に手を出そうとした女なんて」
「今すぐ出て行け!」
「きゃあ!止めなさい…塩をかけるなんて!」
酒場に行けば私に声をかけるだろう。
可哀想な私を見て手を差し伸べると思ったのに、追い返されたり。
お金を借りようと思っても門前払いをしただけでなく塩をかけてきたのだ。
「何て奴等なの…この美しい私に塩を!」
――絶対許さないんだから。
こうなったら私の魅力でヒッチハイクをしてやるわ。
道端で倒れた振りをすればと思いきや。
「あの…どうかお待ちください」
かなり良い馬車だった。
家柄は伯爵以上である事が解り馬車を停めようと試みたが。
「邪魔だ!」
「きゃあ!」
御者が私に目もくれず鞭で打つ。
「何をするの!」
「この乞食が!」
この私が乞食ですって!
「どうした」
「何でもございません旦那様。乞食が物乞いを」
「何だと?なんて卑しいのだ。早く馬車を」
「はい!」
窓を開けることなく馬車はそのまま進んで行く。
「待ちなさいよ!」
私は馬車を掴もうとするも御者が鞭で再び私を叩きその場に倒れてしまう。
どうして…
何で私がこんな目に合うのよ!
「どうして止まらないの…誰も私に声をかけないのよ」
雨が降り始め、沢山の人が私に声をかけることなく通り過ぎていく。
こんなに人がいるのに。
権力の脆さを思い知らされる。
伯爵令嬢で会った時は誰もが私に振り返った。
ただ伯爵令嬢から子爵令嬢になっただけ。
それだけの事なのに。
私は選ばれた存在なのに。
誰からも愛される存在なのに。
シオンは私が愛してあげると言ったのに拒絶をして。
私が不幸になっても今まで情を交わしてあげた男達は私を救おうとしない。
優しくしてやったのに。
笑顔を向けてあげたのよ。
なのにどうして私に従わないの?
何で何で何で!
雨に濡れ体が重くて動けない。
意識が遠のく中、声が聞こえた。
『憎いだろう』
微かに聞こえる声だった。
憎い‥ええ、憎いわ。
許せないわ。
『だったら復讐しろ』
――復讐?
『私から大切なものを奪った女を地獄に』
あの女を地獄に叩き落す。
そうだわ。
私が受けた屈辱を、苦しみを味合わせてやりたい。
私以上に不幸になってもらわないと。
私は――。
許せない!
『復讐しろ』
声が強くなり、目の前には私がいた。
77
お気に入りに追加
5,998
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる