婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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122遠い昔の覚悟~ディアッカ

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いい意味でも悪い意味でも真っすぐすぎる馬鹿二人の説得は終わった。


だがここからは俺が一人で動かねぇと。


「ディアッカ、何を考えてますの」

「あ?」

「その悪人顔で下町に行くつもりですの?」


柱の陰から現れたのはニナだった。
普段から俺をゴミ以下のような目で見ているこいつが何でここにいるんだ。


「何だ?俺と遊んで欲しいのか」

「馬鹿を言わないでくださる?殺されたいのですか」


本当に日に日に過激になるな。
まぁ、これが本性だろうが。

王族でも立場の弱い王女を守るならこれぐらいの強さは必要だがな。


「私が何も知らないと思っていて?」

「お前も裏社会なんてあんまり踏み込むなよ」

「貴方、本当に不愉快ですわ」

「あ?」

頭を撫でようとしたら手を振り払われた。


そんなに怒る事か。


「何時も一人で全部する。貴方馬鹿でしょ?今回ばかりは無傷では済みませんわよ」

「ああ」

「最悪の場合…」

「今さらだ」


俺は王妃陛下の側近になる事を決めた時に既に命は捨てた。
幸せになれない事も理解していた。


いや、俺の人生は幸福だった。
ガキの頃は惨めでどうしようもなかったが、士官学校に入り騎士になって俺は世界を知った。


貴族は今でも大嫌いだ。
腐った権力者が治める国に未来なんてなかった。


でも違ったんだ。


「シオンは最後の砦だ」

国を俺達の未来を任せる男にアイツを選んだ。
この人選を間違いにしたくない。


いや、俺はシオンにかけたんだ。
確かにまだまだ甘さはある。

だが王が心無い冷酷さを持つ必要はない。
汚い仕事は臣下の役目だ。


まぁ甘んじる男じゃない。


「貴方、自分が何を言っているか解ってますの?」

「ああ」

「解ってない…解ってませんわ!」


この計画を実行するにはなりふり構っていられない。
あの女は今度こそすべてを取り戻そうとして堕ちるところまで堕ちるだろう。


どんな手を使ってもシオンを手に入れる為に人である事を捨てた。

そして背後にいるあの男を…


「ディアッカ…貴方死ぬ気ですの」

「好き好んで死ぬわけじゃねぇよ」

「そういいながら貴方は自分に容赦がない」

「これまでそうやって生きて来た」


そうだ。
俺達のような身分の人間は何時も危ない橋を渡って来た。


焼け野原をはだしで歩き、氷の橋を歩くしかなかったんだ。


今回もそうだ。
他に道がない、選ぶ余地がなかったからだ。


だから…


「ふざけないで!」

「は?」


急に胸倉を掴まれ俺は一瞬驚きはしたが殴られると思った。



だが殴られるよりも衝撃的だった。


ニナが泣いていたからだ。


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