婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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114王の資質~リディアside②

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――絶対に苦労する。
そんなの解りきった事だったけど。

その苦労だって覚悟してる。
だってシオン様は未来の無い私に明日を下さった。


幸福になれない私に沢山の幸福をくれた。

だったら私は。


「シオン様、王になってくださいませ」


「リディア…」


「既に断るのは難しいかと…騎士となる事を望んでおられるシオン様には酷だと思います」


だけどシオン様の願いは国の安泰と民の幸福。


「戦争をせずに、血を流さない国づくり…王ならできましょう」

「まったく戦争をしなくて済むという事は無理ですがね」


ディアッカ先生の言う事は正しい。
でも無駄な血を流さない方法を探す事が出来る。


騎士団を動かす権利も国王ならあるのだから。


「私には…」

「おいおい、騎士が戦場を前にして逃げるか?」

「そんな訳ないだろう!」

「今のお前は敵前逃亡だ」


「くっ!」


本当にやるわねディアッカ先生。
口で勝てる人間は我が国には存在しないわね。


「大体、お前は既に逃げられない。なら受け入れろ」

「だが、色々と問題が生じるだろ」

「そんなもん、権力でねじ伏せれば簡単だろう」

「簡単じゃないだろ!」


ディアッカ先生の言葉は行き過ぎだけどできなくはない。


「問題なくてよ」

「ええ、既に戸籍上では婿養子になってますから」

「は?」


お姉様が大臣に書類を持ってこさせ、私達はその書類を目にすると。


「見間違いでしょうか?私は王族に婿養子になっているのですが」

「ええ、見間違いではない」

「あの…これは違法では」


後から改ざんしたのね。
一応できなくはないけど、その場合少し厄介な手を使ったのでしょうけど。


「まぁ、準備は既にできている」

「はぁー…」


人生諦めも肝心だわ。
恐らくお母様の事だから断ってもあの手この手を使って来るでしょう。


執念不快のだから。
口に出して言う事は出来ないけど。


「承知いたしました」


結局シオン様が折れる形になった。




話し合いが終わって待機していた近衛騎士とチャールズ様は。


「胃が痛い…」

「王妃陛下、なんと強引な。シオン様の苦労が目に見えます」


彼等はシオン様の苦労を思い泣きそうな表情をしていた。


「チャールズ、私は不安で…」

「解るぞ。王妃陛下の暴走は今に始まった事ではないが…解る!」


傷の舐め愛ではあるけど。
きっとこの先二人の友情は永遠に続くだろうと思った。


だけど、全てが大縁談ではない。
シオン様が立太子する噂は瞬く間に広まり、良く思わない者もいたのだった。






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