婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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107道中での騒ぎ

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しばらく道を通ると市場を通り、その先には人だかりができている。


「何時の間に…」

「すごい人ですわね」


まるで出待ちをするかのように国民達はリディアに手を振っていた。
近衛騎士が道を守っているので事故に巻き込まれる事はなかったが、何時の間にこんなに大袈裟になっていたなんて気づかなかった。


「これはまるで」

「ああ王族の警護だ」


いかに王族であっても、降嫁した王女にやり過ぎではないのか。


「リディア様、手を振ってやってください」


「え…」

「皆、一目貴女を見たいと昨日から出待ちの準備をしていたんで」


昨夜から。
それはつまり一晩待機していたのか。


リディアは苦笑しながら手を振ると民達は声を上げて大喜びをしていた。

「おお、新聞記者もわんさかいるな」

「お前、何がしたいんだ」

「まぁ、二時の方向を見ろ」

指さした方向を見るとやたらと汚い馬車が反対方向から近づいて来る。


「おい!何をしている!」

「ここから通れない!迂回しろ」

無理に車線変更をしようとする馬車に近衛騎士達が馬車を止めさせようとするも無理に進み馬車が傾いた。


「馬鹿だろ…ここは一方通行なのに」


「余程御者が悪かったのかしら」


正規の御者ならまずありえない。
しかし一昔の古い馬車では扱うのは難しく車輪が悪いかったのだろう。

御者は故意的なではないけど。


「ちょっと!どうなっているの!」


すると馬車から声が聞こえた。
御者を怒鳴りつける声に私達は察した。


「こんな道の往来でも良く聞こえますわね。本当に…」

「ニナ」


人混みの中でもはっきり聞こえる。


…というか、煩いな。
聞くに堪えないので早く馬車を走らせて欲しいものだ。


「ディアッカ先生、馬車を出してください」

「賢明な判断ですよ」



「ここで仲裁なんてしたら近衛騎士の皆さんに迷惑をかけてしまうわ」



リディアの判断は正しい。
このまま無視をして去りたい所だ。

これ以上王宮に向かうのが遅くなっては困るからな。


馬車がそのまま左折しようとした時だった。


「シオン?シオンでしょ?待ちなさい!」


大きな声で私の名前を呼んだのは言うまでもなくサンドラ嬢だった。


「何をしているの!助けなさい!」


続いてヴィッツ夫人が怒鳴るように叫んだ。
本当に学習能力がないのか?そんな真似をすればどんな目に合うか理解できないのか。

既に近衛騎士の表情が変わったというのに。

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