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閑話1自称お姫様の悲劇~サンドラside⑤
しおりを挟む「聞きましてシオン様の噂」
「ええ、大活躍だったそうで」
シオンが士官学校に入ってからしばらくして。
訃報を聞く事はなくそれどころか、シオンの活躍を耳にして不愉快な気持ちでいっぱいになった。
「聞けばチャールズ様とご一緒に先日も放火の中子供を助けたとか」
「勇敢で聡明で素晴らしいですわ」
社交界でも、我が家のパーティーでもシオンの噂が聞こえてくる。
「婚約者殿の噂はすごいですわね」
「ご息女は幸せですわね。素敵なご子息と婚約出来て」
「シオン様に相応しい女性になってくださらないと」
何で私がシオンに相応しくならないといけないのよ!
逆でしょうが!
「ええ…ですが、将来を考えると」
「そうですな。士官学校を出ても近衛騎士に入れるかは…」
顔が引きつる二人。
そうよ、学校の中だから活躍できただけ。
でも卒業後は騎士になるわけじゃないわ。
だって!
「まぁ、何をおっしゃいますの?」
「ご冗談を」
「はい?」
冗談を言っているわけがあいのに、何をクスクス笑っているの!
「特別科に在籍した生徒は皆、騎士団に入りますわ。シオン様は辺境伯爵家のご子息で次男であれば騎士として身を立てられるのではなくて?」
「近衛騎士は王家をお守りする剣ですが、騎士団は国を守る盾…きっと団長まで出世されますわ」
何を馬鹿場事を言っているのかしら?
ありえないわ。
そんな折、士官学校を卒業をまじかに控えた日の事。
「今なんて?」
「ああ、卒業後は騎士団に入る。近衛騎士団ではないが、国の為に働ける」
「騎士になるですって?」
その場にいたお母様も激怒する。
私も同じだわ。
「ですが…お嬢様との婚約はどうなさる気です!」
「そうですわ。伯爵令嬢であるお嬢様の婚約者が騎士だなんて笑い者ですわ」
「そうですわ!」
私の気持ちを察した侍女が私を庇いながらシオンを詰った。
「何を言っているんだ…貴族が騎士になるのは多い。現に騎士団の四割は貴族だ。何より私は婚約前から騎士になると伝えていたはずだ。私の父も元は騎士だ」
「こんなの詐欺ではありませんか!騎士なんか!」
「騎士なんか?君は我が国の騎士を侮辱するのか…国の為に生きている彼等を。高位貴族の中にも騎士は多いというのに」
「シオン!侍女を責めないで」
悪いのはシオンなのに。
どうして私達が責められないといけないの!
シオンは私の騎士にすらならない役立たずだったなんて!
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