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閑話1自称お姫様の悲劇~サンドラside②
しおりを挟む不幸な私は望まない形で婚約をする事になった。
だけどアスハルト家は中位貴族に比べれば裕福な家だった。
我が家以上の財を誇っている。
お母様が言う通り、当面は婚約だけしてあげても良いと思った。
堅物であるけど根っからの騎士体質。
美しい私が婚約してあげるのだから騎士役として傍においてあげるわ。
それにシオンの友人は美しい殿方が多かった。
私には相応しくないけど、利用価値は十分にあるのが公爵家の長男であるチャールズだった。
セディア公爵家は王族の直系の血を引いている。
今日は買い物に行きたいから馬車を出す様に告げたのだけど。
「シオン、どうしてこの馬車なの!」
「えっ…」
「白い上等な馬車があったでしょう!」
アルハルト家の門院が入った素敵な馬車。
あの馬車で買い物に行きたかったのに、それに護衛騎士に私は彼を指名したのに。
「チャールズ様はどうしていないの?」
「彼は休日だ。せっかくの休みに…」
「私に護衛騎士を用意しない気なの!酷いわ!」
この私が一緒にデートしてあげるのに護衛騎士を用意することもしないなんて。
「護衛は私がいれば…」
「まぁ!なんて酷いのでしょう!」
「お嬢様に対してどれだけの侮辱をすれば気が済むのかしら!」
シオンは私を何だと思っているのか。
この私が仮初と言えど婚約してあげているだけでも奇跡に等しいのに有難がることもしないなんて何様なのかしら。
「とにかくあの場所じゃないとデートはキャンセルよ!」
「そうですわ!こんな普通の馬車だなんて」
「今すぐに…」
「解った」
全くここまで言われないと解らないなんて血のめぐりが何処までも悪いのか呆れるわ。
でも解ったのなら許してあげるわ。
私は心が広いのだから。
「レストランはキャンセルしよう」
「は?」
「何を言っているのです」
「あの馬車は兄が使う。それに友人を護衛騎士にだなんてできるはずもない」
「は?」
私の願いを聞き入れないなんて何様なの?
シオンの癖に!
「なんて真似を」
「私の友人は使用人ではない。使用人であっても了承しかねる」
シオンは私に対して愛情が足りなかった。
愛しい婚約者の願い一つ満足に聞き入れる事も出来ず、馬車一つにしてもそうだ。
送り物だってダイヤが良いと言っても送ってくれない。
「シオン、私はあのペンダントが欲しいわ」
「あれは母の大事な宝物だ」
「私はあれが欲しいの」
「欲しいと言われてもダメだ。あのペンダントは父が母の為に地底に潜って手に入れた宝石だ」
どうしてシオンは私の願いを叶えてくれないの?
送り物だって私が本当に欲しい物じゃない。
家宝の宝石の代わりに安っぽいルビーのペンダントだったし。
私はあのペンダントが欲しいのに!
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