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97愛の形
しおりを挟む真実の愛を求めていたサンドラを理解したい。
彼女を愛したいと思った昔の私はどんなに愚かだったのか。
「欲しがるだけの愛は、一方的だ」
「何を言って…」
「他人に求めるだけで誰かに愛情を与えようとした事はあるか?ないだろう…君の愛は自己愛で強欲で歪んでいる」
何を言っても無駄だろうと解っている。
それでも言わなくてはならない。
「リディアは私に愛情を与えてくれた。真実の愛とは片方だけ与えるものではない…君の思い描く真実の愛は暴力的だ!相手の気持ちを一切無視し、薬で意のままに操っただけだろう」
「違う…」
「私は君を心底軽蔑しながらも哀れに思う」
ずっと愛を求めていたのは、愛を知らなかったのかもしれない。
「両親からも真面な愛情を貰えなかったのだろう。だから欲しがる」
「何を言っているの!私はサンドラを愛していたわ…美しく着飾り、望むような」
「それは愛玩人形と同じではありませんか」
静に見守っていたリディア様が告げた。
他の皆もその言葉に肯定こそしても否定はしなかった。
「それはもはや愛情ではありませんわ。本当に愛しているならば時には叱って過ちを正す者…少なくとも私の母は甘やかすばかりの母ではありません」
「リディア…」
「体が弱く自暴自棄になっていた時も母は私を優しく抱きしめ、時として叱ってくださいました」
「当然よ。親とはそういうものだわ。もっとも貴女は望まない子供でしたものね?」
「何を言って…」
「ただ自分の娘に叶えられなかった夢を叶えさせ、過去を塗り替えたかった。そうでしょう?」
王妃陛下の言葉にヴィッツ伯爵夫人が冷や汗を流す。
「アスハルト辺境伯爵を手に入れられなかった…だから娘を利用したんでしょ?どうせヴィッツ家とは手を切るつもりだったようだし…」
「手を切る?」
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まさかチャールズも陰でヴィッツ家を調べていたとは知らなかった。
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もはや他に言葉をかける事もない。
「連れて行きなさい」
王妃陛下の命令により三人は連行されて行った。
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