婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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真実の愛を求めていたサンドラを理解したい。
彼女を愛したいと思った昔の私はどんなに愚かだったのか。


「欲しがるだけの愛は、一方的だ」


「何を言って…」

「他人に求めるだけで誰かに愛情を与えようとした事はあるか?ないだろう…君の愛は自己愛で強欲で歪んでいる」


何を言っても無駄だろうと解っている。
それでも言わなくてはならない。


「リディアは私に愛情を与えてくれた。真実の愛とは片方だけ与えるものではない…君の思い描く真実の愛は暴力的だ!相手の気持ちを一切無視し、薬で意のままに操っただけだろう」

「違う…」

「私は君を心底軽蔑しながらも哀れに思う」


ずっと愛を求めていたのは、愛を知らなかったのかもしれない。


「両親からも真面な愛情を貰えなかったのだろう。だから欲しがる」

「何を言っているの!私はサンドラを愛していたわ…美しく着飾り、望むような」


「それは愛玩人形と同じではありませんか」


静に見守っていたリディア様が告げた。
他の皆もその言葉に肯定こそしても否定はしなかった。


「それはもはや愛情ではありませんわ。本当に愛しているならば時には叱って過ちを正す者…少なくとも私の母は甘やかすばかりの母ではありません」

「リディア…」

「体が弱く自暴自棄になっていた時も母は私を優しく抱きしめ、時として叱ってくださいました」

「当然よ。親とはそういうものだわ。もっとも貴女は望まない子供でしたものね?」


「何を言って…」


「ただ自分の娘に叶えられなかった夢を叶えさせ、過去を塗り替えたかった。そうでしょう?」



王妃陛下の言葉にヴィッツ伯爵夫人が冷や汗を流す。


「アスハルト辺境伯爵を手に入れられなかった…だから娘を利用したんでしょ?どうせヴィッツ家とは手を切るつもりだったようだし…」


「手を切る?」

「ええ…だってこれを使ってずっと夫に毒を盛っていたのだから」


王妃陛下が見せたのはヴィッツ家に行くと必ずヴィッツ伯爵が飲んでいたウィスキーだった。


「このウィスキーから毒が検出されましたよ」

「チャールズ…」

「少し時間がかかったが…」


まさかチャールズも陰でヴィッツ家を調べていたとは知らなかった。


「娘よりも貴女の方がずっと罪が重いですよ…まぁ、ここまできたらならば一家そろって罪を償ってください。狭い牢獄で三人仲良くね?」

もはや他に言葉をかける事もない。


「連れて行きなさい」


王妃陛下の命令により三人は連行されて行った。


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