婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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95全ては思惑の中~ディアッカside

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「身分は関係ないんだがな」


俺を罵倒する馬鹿な男は完全に踊らされている。


「黙れ!貴様のような男が私に口を利くとは」

「それは私に対する侮辱かしら?」


言いたい放題の馬鹿な男は気づかないのだろうな。
俺の仕事を馬鹿にして、否定する事は俺の使える主を侮辱する事だ。

「王妃陛下…」

「ディアッカは私直属の部下でもありますのよ?彼は士官学校卒業の後私が優秀さに目をつけて諜報活動を命じていましたのよ…彼を侮辱する事ですわ」

「しかし!」

「黙って聞いていれば私の大事な娘の披露宴をぶち壊し、言いたい放題、やりたい放題…貴方は何様なの?」

「あれは…」

「親なら子供を止めるべきでしょう?ああ、貴方が命じていたなら別ですが」

「貴様!」


本当に馬鹿だな。
ここで感情的になるなんて馬鹿としか言いようがない。

貴族社会は騙し合い。
どんな罵倒も笑って流すのが暗黙の了解で、感情的になった方が負けだってのに、本当に馬鹿だろ。


「サンドラ・ヴィッツは隣国の皇太子殿下にストーキング並びに影武者にセクハラ行為を行った以上、重罪ですわ。その母親はシオン・アスハルト伯爵を長きにわたり虐待した証言もありますわ」

「そんな…」

「勿論貴方も無傷でいられると思わないでくださいな。離縁したとしても、正式な手続きをするまでは夫婦ですから一家の主としてその責任は全て貴方が負う事になるでしょう」


流石王妃陛下。
簡単に離縁なんてさせるはずもない。

これまでシオンを苦しめた罪を償って貰うぜ。
爵位剥奪なんて生ぬるい事は許さないだろうが、すぐに料理したら面白くない。


社交界から事実上の追放になるが、その前にやるべきことがある。


「きゃああ!何をするの!」

「無礼者!」

拘束されているサンドラの懐に隠してあるあの薬。

「ありました…禁断の薬です」

「違法な毒物までも持ち出すとは」

「違うわ。それは毒じゃない」


今さら言っても遅いんだよ。

「惚れ薬と言う名の毒ですよね。これまで自分の意のままに男を操る為に飲ませていた証拠は掴んでいますよ」

「黙りなさい!誰に向かって言っているの!」


この後に及んで自分はお姫様だと思い込んでいる。
本当に頭がおかしいんじゃないのかと思ってしまうが、ここで認めないなら罪は重くなる。


それにサンドラが騒げば騒ぐ程こちらは有利になるんだからな!


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