婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

93悪女としての言葉～リディアside

薬が切れる時間を合図され、最後の仕上げに取り掛かった。
時計を確認し、針が重なる時間ピッタリに薬は完全に効果は切れてしまうけど。


記憶がないわけではない。
通常なら記憶が曖昧である事があるけどそれでは意味がない。

自分達が何処までも愚かな行動をしたか思い知らせなくてはならない。
後悔しても遅いわ。

まぁ知らなかった。
つい口が滑ったなんて言い訳は通らない。


ただ記憶が曖昧だったら精神に異常があったと罪が軽くされる。
そんなことをしたら完全な意味で悪女にできない。


だから私は…


「皆様、どうかこれ以上彼女を責めないください」


今日の為に念入りに練習して来たわ。
国内にあるロマンス劇を見たり、鏡に向かって泣く練習をしたわ。


悲し気にしながら涙を溜めて…


「しかしリディア様…」


周りが同情の表情を寄せる。


「こんなに震えて、なんて事」


震えるのは玉ねぎがきついのだけど。
自由に涙を流すのは私には難易度が高いから袋に玉ねぎのみじん切りやすりおろしを忍ばせてある。


匂いはしないけど目に染みるわ。


そしてとどめの一言。



「ありがとう。私の犠牲になってくれて」

「は？」


周りに聞こえないようにそっと耳打ちする。


「貴女が馬鹿なおかげで私は幸せになれるわ。彼はの心は私のもの…踊ってくれてありがとう」

「何を…」

「貴女は最初から踊ろされていたのよ。私が幸せになる為に」


耳元で囁きいかにもな言葉を吐く。


「でもいいわよね？貴女は身の程を弁えない…だからお似合いよ？私は聖女になって貴女は悪女がお似合いよ」


私の言葉を聞いて絶句する。
見下し馬鹿にしていた相手だものね？


「この証を見て…薔薇の儀式をしましたの」

「なんで…」

「この証の意味を知っていますわよね」


どんなに頭の悪い彼女でも知っているだろう。


薔薇の儀式を行った以上、サンドラと復縁は不可能だわ。


「病気も治って…全部貴女が馬鹿な真似をしてくれたおかげ。殿下の影武者の影武者と寝てどうだった？彼は平民で既婚者よ」

「・・・・」

静かな怒りを感じる。
私の言葉で心を完全に怖し怒りを爆発するのが手に取れるように解る。


そして私の言葉で完全に逆上したサンドラは私に暴行を働いた。
弁解の余地もない程に。


その直後だった。


薬の効果は完全に切れてしまったのは。


周りには悪女に許しを請い、慈悲を与える聖女に見えただろう。