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87悲劇のヒロイン
しおりを挟む二人寄り添ういながらまるで悲劇だと思った。
そういう風に見せているのだ。
「何を…何を言っているの」
「サンドラ嬢、私は貴方の思い描いた夫になれなかった。その事を今も悔やんでいます」
「シオン様…」
「ですが、貴女の心を奪う人がいると気づけなかった。婚約を私から断る事は失礼と思いましたが、断るべきだった。そうすれば貴女を長い間苦しめなかった」
「馬鹿な!サンドラにそんな方は!」
ヴィッツ伯爵夫人が声を荒げる。
「いい加減にでたらめを言わないで!頭がおかしくなってしまったの?」
「おい、止めないか」
「だって貴方、こんな茶番劇のような真似。形だけの婚姻に過ぎないのよ?どうせ一年もすればリディア王女は死ぬんだし…一生操を誓うなんてありえないわ」
「止めないか!」
「なのに熱に浮かされたの?サンドラがエアハルト殿下と情を壊しておかしくなったとしか思えないだ。永遠の愛なんてまやかしだし馬鹿馬鹿しい!」
自分でも何を言っているか理解していないな。
この場をどういう場所か解っているのか?
いや、これもディアッカの作戦の一つだ。
「変わらないものはないでしょう」
「は?」
「私はずっと一緒にとは叶いません。もし夫が私の死後に、他の愛する人が出来た時私は天から見守りますわ。それが貴女だとしても」
一瞬で会場が凍り付く。
「リディア王女殿下!」
「それはあまりにも」
「そうですわ」
他国の貴賓達が辛そうに言うも。
「私が死んだ後も、私だけを思い続けろだなんて傲慢な事は言えません。ただ願うのは、命日に貴方がくださった百合を備えて欲しいのです」
「リディア様」
「私の一番好きな百合を」
私がリディア様に差し上げた一輪の花。
この花は二人にとって大切な物だった。
「私は貴女に操を誓っています騎士が約束を違える事はありえませんよ」
「でも、私は貴方に不幸でいて欲しくありません。そして貴女にも」
ゆっくりとサンドラ嬢に視線を向ける。
「私は貴女から婚約者を奪ってしまった、愛はなく貴女に愛する人がいたとしても申しわけなく思います」
「なっ…」
「ですから本日、私のお祝いに来てくださったことを心から感謝し…」
穏やかな表情はまるで慈愛に満ちた聖女そのものだった。
対するサンドラ嬢は酷い表情で嫉妬に狂った悪魔のようだった。
「ふざけないでぇぇ!」
手を差し伸べようとしたリディア様にサンドラ嬢は手を叩き睨みつけた。
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