婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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83準備の裏側で

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順調に進み、リディア様の吸収力は恐ろしかった。
元より聡明な方であるが、記憶力がすごすぎる。


「第一王女殿下とは正反対だな」

「何?」

「あの方は勉強はとんと苦手だったからな…まぁ、姫様の場合は命にかかわるからだろうな」

離宮で過ごされ、人の顔を覚えておかなくてはならない。
顔だけではなく仕草や、本人かどうか判断できるようになった経緯を察すると不憫でならないが。


「ある意味では天才だろう。あそこまで短期間で知識を吸収できる人間は少ないぜ」

「しかし、国の裏側の隅から隅までお教えする必要があるか?悪女の裏側など…」

「甘いなチャールズ。だからお前はチャールズなんだよ」

「どういう意味だ」

おいディアッカ。
今の発言は同じくチャールズの名を持つ者を侮辱する事になるぞ。


「臭いものに蓋をしてばかりじゃ同じだろうが…人の醜さの全てを教えて、自身も悪女になる覚悟を持ってもらわねぇと」

「しかしだな…」

「優しい女が幸福になるのは小説の中だけだ。この世は弱肉強食だ…特に貴族の世界は欲望の塊だ」


ここまでディアッカに言わせてしまっている事が悲しいな。
そして私達貴族の犠牲になっているのが申し訳なさを感じる。

「今さらだ」

「ディアッカ…」

「過去だ」


解っているのに、納得できない自分がいる。


「結婚式が終わるまでぬかるな…式の終わりに馬鹿が踊るだろう」

「本来なら大事な結婚式だというのに」

「ああ…」


言いたいことは解る。
だが挙式と披露宴だけはちゃんと行う予定だ。


「船の準備は問題ない」

「ああ、後は当日に少しだけ驚かせてやる」

「それであの女はどうするんだ」


サンドラ嬢は、勿論別口で招待状を送ってある。
ただし、母上から招待状を送る手はずになっている。

計画の打ち合わせの時。



「彼女の招待は私達に任せなさい」

「ああ、最高の招待状を用意しておくよ」


母上と兄上のあの時の笑顔を忘れる事は出来ない。


「まぁ、あの肝っ玉母ちゃんだからな」


母上の笑顔は恐ろしかった。
兄上も同じような笑顔を浮かべていた。


サンドラ嬢の事は任せる事にしたのだが…



「どういう事、挙式は延期だったんじゃないの!」

「絹は手が入らないように仕組んだのに!」

「どうせ貧相な結婚式よ」

「そうよ、サンドラ。貴女は絹の最高級のドレスで参加なさい」



私が知らない所で既に踊っているサンドラ嬢に気づかなかった。


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