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78策士の男
しおりを挟むディアッカの協力を得て、作戦は結構された。
現在ヴィッツ家は金銭的問題で困窮しているようだが、生活は変わる事はないそうだ。
一連の絹が手に入らなくなった事件に至っては首謀者がヴィッツ家である事が解った。
元より派手な生活ぶりで、邸に商人を呼んでいたそうだが。
「あの女体を使って証人を誘惑したようだな」
「いかに誘惑しても無理が…」
「闇市場で厄介な薬が出回っているんだよ」
耳が痛くなるな。
「既に俺の部下が調べている。あの女例の薬にまで手を出しているようだぜ」
「媚薬か」
その昔魅了魔法という物が存在した。
その祖先が作った薬には惚れ薬に近い効果があるが、現在の錬金術師や宮廷医局長が調べた結果その薬はおとぎ話で出てくるような惚れ薬のような甘いものではない。
心身ともに幻覚を見せる。
脳にも異常を来す恐れがあり、使い過ぎると。
「精神を崩壊させ、内向的な人間は狂暴化する」
「ただしその媚薬は好意を多少でももってなくてはならないだろ?」
「現在無関心レベルでも効果はあるが…微弱だ」
ようするにだ、無関心だとあまり効果はない。
「だが馬鹿な女とは勘違いが酷い。少しでも薬が効けば自分の魅力に靡かないはずはないと思い込んでいる。あの女、絶対に仕掛けてくるぞ」
「随分と馬鹿にされたな」
敵国でも媚薬を使ってハニートラップを行うスパイはいる。
「お前には媚薬は一切通じない。むしろ、媚薬を使って近づくのは天に唾を吐くようなものだろ」
「ああ、薔薇の鎖があるからな」
以前から媚薬や魅了魔法の訓練は騎士団で受けていた。
服毒に関しても同様だ。
「油断するなよ、あの女は結婚式は延期になったと思っている」
「ああ式場は抜かりない」
このまま予定通り挙式を行えば周りは勝手に勘違いするだろう。
余命僅かで形だけの結婚式と思い込んでいるが同盟国や隣国も招待している。
参加しない貴族達は勝手に解釈するだろう。
表向きの貧相な結婚式と。
「当日の披露宴は盛大に行う予定だ。特に他国の貴賓に喜んでいただけるように」
「お前も考えたな。船で周遊して堪能してもらうとはな」
他の国ではまずない斬新なアイデアは水軍ギルド達が考えてくれた。
会場を借りて披露宴を行うよりも船の上で花火を打ち上げ、新鮮な魚介を堪能しながら豪華客船として多くのサプライズを用意している。
「貴族派の馬鹿な連中は義理で参加するだろうが当日は遅刻する手はずだ」
「ああ…」
「挙式が終わった後に腰を抜かすだろう」
すべての計画はディアッカによるものだ。
綿密な計画を考え実行にまで移せるように手筈を整える事が出来たのは人脈のあるディアッカのおかげだ。
全てが終わったら領地の自慢のワインを送ろう。
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