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61先手~王妃side
しおりを挟む本来なら一年の準備期間の後に盛大な挙式を行いたかったけど。
「リディア、良くて」
「私は豪華な挙式も望みません。あの方の妻になれるなら」
リディアは聡明だわ。
行動的なテレシアに対してリディアは聡明だった。
息を潜めて生きて来たこそ慎重だった。
ある意味テレシア以上に危機管理があり、頭の回転の速さはテレシア以上だわ。
「大丈夫よ。貴女からシオン様を引き離したりしないわ。絶対に引き離せないように儀式をおこなったのだから」
そう、あの儀式を行った時点で二人が引き裂かれることはない。
「死が二人を別つ事はないわ」
二人はある意味では繋がっている。
「お母様…」
「これまでちゃんと守ってあげられなかった。だからこそ貴女の幸福は守るわ」
母親としてリディアにしてあげられた事は少ない。
だからこそできる事はあらゆる手段を使うつもりだわ。
「しかしお前…」
「何度も言いますが。貴方に拒否権は無くてよ?普段から役に立たないのだからこんな時ぐらい役に立ちなさい!」
「泣いていいか…」
王族の挙式は婚約式から一年の準備期間が必要。
だけどリディアは公にあまり出ていない影の王女とも呼ばれている。
ならばその悪評を利用するわ。
「すぐにディアッカを呼びなさい」
「畏まりました」
侍女に命じて彼を呼び出させた。
「こういう時はあの男が得意だわ」
「お母様、何故彼を…」
「下世話な噂を流す事や、噂を利用して面白おかしくでっち上げるのは得意よ」
「まぁ、似非騎士。またの名は詐欺師だからな」
「詐欺師…」
リディアは社交界にあまり出ないから知らないでしょうけど。
これまで敵国のスパイを色んな罠にかけて潰して来たわ。
他にも王族の命を狙う貴族を潰すべく醜聞を作りでっち上げて追放に追い込んだのだから。
「お呼びでしょうか」
「案外早かったわね」
「それをおっしゃいますか」
まぁ、遅かったらどうなるか理解しているでしょうしね?
「貴方の出番よ。社交界の噂好きな女性で遊びなさい」
「随分と明け透けですね?」
「文句でもありまして?」
顔が一瞬引きつっているのはまだまだね?
私を騙すぐらい出来なくてはまだまだ一人前とは言えないわ。
「王妃陛下を騙せる人間なんていないと思いますがね…」
「ディアッカ、そなたも苦労するな」
「陛下程ではありませんよ」
影で二人が背筋を曲げていた事は見なかった事にするわ。
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