婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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59娘の不安~王妃side

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王都に戻って来たリディアは見違えるように綺麗になっていた。
ここ数日、食欲もあって熱も出なかった。


何より今まで消極的なあの子が積極的になり、大胆な告白をされてしまったわ。


「お母様…その、騎士の方を誘惑するにはどうしたらいいでしょうか」

「なっ!リディア!」


当然の如く夫は失神した。
これまで温室育ちだったから当然ね。

テレシアとは正反対な深窓の姫君に育ったのだから。


「まぁ!」

「その…シオン様を」

「もしや、旅先で」


本来なら一線を越えるのはいただけないのだけど。
この際私は寛大になるわ。

だって結婚を諦め、女性としての幸せも捨てざるを得ない状況だった。

なのに彼はリディアとの婚約を承認し、尚且つ婚約に関しては王命である事は告げないで欲しいと言ってくれた。


その理由は社交界でリディアが冷遇されている。
故にシオン殿はご自分が中傷されてでもリディアを守ろうとしてくれたのだから。


旅先での映像も彼が実直な男性である事は明らかだったわ。
激しい恋ではなくとも愛情は芽生える。


何よりリディアはシオン殿を心底好いている。
ただ積極的になるのは難しいと思ったのだけど、こんな大胆な事を言うなんて。


「シオン様は真面目過ぎて…手を出してくださいません」

「リディア、しかしだな…」

「貴方黙ってなさい!」


復活が早かったわね。
でも、今回は黙っててもらうわ。


「第一、リディアを籠の中の鳥にして尚且つあんな空っぽな男を婚約者に選んだのは誰です?」

「私だ…」

「まぁ、結果オーライとうことにしてあげます」


私もあの男がリディアに強引な行為をしようとした事を後から知った時は殺してやりたくなったは。
真面に手を繋ぐことも無く強引に肉体関係を迫るなんて論外だわ。


「貴女が積極的になってくれて嬉しいわ」

「はしたないとお思いになりませんの?」

「いいのよ。婚約者に求められたいと思うのに何がいけないの」

そうね、シオン殿のような真面目過ぎる男性はこちらからアクションを起こさないと。


「不安なんです」

「リディア…」

「あの方を疑うつもりはありません。ですが、他の方に奪われないか…」


きっと過去の事がリディアを苦しめているのね。
元婚約者であるあの女は社交界で爪はじきにあっている。


それで婚約解消を解消しようと目論んでいるかもしれない。

婚約破棄をした場合ならば再び婚約を結ぶ事は難しい。


だけど円満な婚約解消ならばできる。
まぁ、事情があった場合だけど、シオン殿とあの女は無理なのだけど。

サンドラという女。
かなり狡猾で欲深い女ので何もしないとは言えない。


「このまま何事も無くシオン様と結婚できるとは思えません」

「解ったわ」


リディアが一番恐れているのはあの女がシオン殿の矜持を汚す事。
それだけは避けなくてはならない。


ならば多少は強引な手を使うべきだわ。

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