婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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50宣言

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王都に戻る前にディアッカに言われた言葉だった。


「シオン、お前は姫様を守れよ」

「それは…」

「身を守るだけじゃダメだ。矜持を守るんだ」


リディア様の矜持を守れという意味を理解できなかった。


「お前がサンドラと上手くいかなかった九割はあの女の責任だ。だがお前も悪い」

「えっ…」

「お前は周りに遠慮するあまり本音を吐かない。俺達は汲み取れるが…」

ディアッカの言いたいことは解った。
サンドラ嬢と心を通わせる事はできなかったが、私も非がある。


「長い間婚約しないで別れを切り出せばよかったかもしれない」

「ディアッカ…」

「姫様が大事なら姫様の心を守れ。誇りを守れ…体だけ守っても心を守れないなら意味がない」


妻の誇りを守るは夫の勤め。
幼い頃から父上に言われていたはずなのに、何も解っていなかった。


「シオン、姫様を好いているなら態度で示せ。お前ならできるだろ」


「ああ」



私は本当に周りに恵まれている。
こうして助言してくれる友人がいるのだから。



ディアッカの助言を胸に刻み込んで私は――。




「私の婚約者だ」

「は?」

「リディア様は私の大切な婚約者だ」



公の場ではっきりと告げる。


「は?リディア様って…」


「我が国の第二王女の名前すら忘れたか」

「は?あの死にぞこないが…」

「口を慎め」


許せない言葉が投げられ私は睨んだ。


「えっ…」

「王家を侮辱するとは何事だ!」

「シオン?」


ずっと私は彼女を哀れだと思った。
恋する人がいるのに好きな相手と一緒になれないことを嘆いていた。

だから私はその思いも受け止めようとしたが、行き過ぎた行為。
そして他人を思いやる心が無かったサンドラ嬢に心から軽蔑した。


「我ら貴族が王家に無礼を働く行為は万死に値する。第二騎士団団長の私の前で王家を侮辱するなど言語道断だ」

「私は悪くないわ!大体何で根暗姫がいるの…もご!」


これ以上の無礼は許せないと思ったが、私よりも早く手が伸びて来た。


「はいはい、これ以上ビックマウスは閉じような?聞いているだけでも不愉快だ」

「なんでしたら無駄な口を抜いてつけて差し上げますわ」



見事なまでな連携プレイに驚きを隠せない。
普段あれだけ罵り合っているディアッカとニナは案外いいコンビになるのではないかと感心したぐらいだった。



「「これ以上しゃべるなよビッチ!」」

「むがー!」


素晴らしい程に行きピッタリだな。


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