婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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閑話5ヴィッツ伯爵家②

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不治の病に苦しんでいたフランシスだったがその病名も解り、回復に向かった。
その頃から本格的に騎士としての道を歩もうと考えていたこ事に。


しかしシオンの思いを知るはずもないデザイアはシオンが士官学校に入った事を聞かされ問いただした。


「貴族院ではなく何故士官学校にしたんだ」


「はい、私は騎士団に入るつもりです」

「は?」

近衛騎士ならばわかる。
貴族の多くは近衛騎士を目指しているのだから。

騎士のは花形で王家を直接護衛するので出世株とも言える。
けれど騎士団となれば話は別だ。

出世できるのは騎士団の中でも第三までだ。
第四騎士団からは平民が多く栄光等皆無と言われている。

「何を馬鹿な…」

「兄ももう大丈夫ですから。予定通り跡継ぎの権利も放棄してあります」

「は?何を勝手な…そんな話初耳だぞ!」

「はい?」

シオンは解らないと言う表情をしていた。
デザイアはゆくゆくはシオンが辺境伯爵の爵位を得ると思っていた。


「そもそも我が家では次男は継承権はありません。補佐に回るにしても一度は家を出るのが方針です…とお伝えしているはずですが」

「そんなの建前だろう」

「いいえ、事実です」


キッパリ告げられた言葉にデザイアは苛立った。
こんな予想外の出来事にどうしたらいいか。

アスハルト家の財産を当てにして結構な額を散財しておりヴィッツ伯爵家は火の車だった。
これまでも、サンドラとシオンが合う時は極力外だった。

デートの費用は勿論、色々かかる費用はシオンの実家に支払わせていた。
他にも援助してもらっていたのだが、こんなのは大した額ではない。

結婚したらもっと搾り取ろうと考えていたのに、シオンが騎士になって独立したら金回りは期待できない。

「どうなさいました」

「いや…シオン、騎士にならずとも」

「我が家は王家に忠誠を誓う家柄です。長男は盾として、次男は剣となるのが何代も続いているのです」


遠回しに騎士を諦めさせようとしても無理だった。
ならば士官学校で騎士に向いていないと知ればどうだろうか?


「そうか。しかし私も君が騎士に向いているとは思えない。だから条件をつけさせてくれないか?」

「条件?」

「そうだ。君が騎士としての資質があるかどうか見極めさせて欲しい。君は大事な娘の婚約者だからこそ」


遠回しに優しい言葉で惑わせ、シオンを騎士になるのを諦めさせアスハルト家の爵位を継がせようと考えたのだが、考えが浅はかだった。


士官学校に入ったシオンを妨害したり、時には士官学校の剣術大会でボロ負けさせようと企てるもシオンは騎士としての才能を見せた。


デザイアが妨害し、騎士見習い時代も窮地に追い込んでも跳ねのけてしまった。


皮肉にもシオンは危険に晒されれば晒される程実力を発揮してしまった。


士官学校を優秀な成績で卒業した三年後。
とある領地で戦争が起きてしまい、騎士達は派遣されたのだ。


その時デザイアはシオンに見切りをつけあわよくば亡き者に知ってやろうとも考えた。
そうすればシオンの個人的な財産を奪えると考えたがまたしても予想外の出来事が起きる。


「シオンが戦に勝利しただと!」


生きて帰る事は出来ないと言われていたにも関わらず軽傷で帰還した。
その功績をたたえシオンは最年少で地位が与えられた。


第二騎士団副団長に着任した。
その一年後には騎士団長となり異例の出世を果したのだ。


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