婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

文字の大きさ
上 下
43 / 169

40小さな新聞

しおりを挟む




王都を離れているので問題ないと思ったが、しくじったか。


「ディアッカ!貴様と言う奴は」


「何だよ?別に王都日報じゃないんだから…こんなの小さな新聞じゃねぇか。平和で娯楽もねぇんだぜ?」


「チャールズ、少しイライラし過ぎだぞ。ミルクを飲め」

「お前はのんびり構え過ぎだ!」

新聞をテーブルに叩きつけ怒るチャールズの言いたいことも解るが、ディアッカは何故こんな真似をしたんだ?


「理由を聞かせてくれ」

「あ?」

「お前は理由なくこんな真似をしない。何故こんな真似を」

ディアッカは聡明な男だ。
士官学校時代からディアッカの頭の良さは教官も騎士になるのではなく文官になるべきだという程の頭の回転が速かった。


「少しは領民を安心させてやれよ。お前あのビッチ女に捨てられて領民達、特にギルド達が嘆いていたんだぜ?」

「ぐっ…」

この領地を賜ってから私の親代わりを務めてくれた彼等。
水軍ギルド達には心配をかけていたのは事実だ。

「今まで浮いた噂も無く真面目過ぎたお前があれに捨てられ王都の噂で精神的に病んでいるんだ。明るい話を持ってきてもいいじゃねぇか」

「ディアッカ…」

そうだったのか。
お前は領民達の為にわざとこんな事を!

「騙されるなシオン!こいつのニヤニヤした顔を見ろ」

「水を差すなよ。半分は事実だぜ?」

「その半分は?」

「予防線」


半分は予防線とはどういう意味だろうか?


「お前社交界でどう呼ばれているか解っているか?少し前は愛し合う二人を邪魔する最低な男、今は婚約者の浮気を黙認し許した腰抜けだ」

バキッ!


今バキッて音がしたんだが。

「挙句の果てにお前は男として欠陥品、不良品だとも言われて…」


「誰だ!ぶっ殺してやる!」

「チャールズ止めろ!騎士だろうが」

「人として許せん!」

こう見えて情に厚い男であるチャールズは許せないのだろう。
私自身は顔も知らない人間に言われたことがから気にする事はないし、そんなくだらない噂を流す人間は器が小さいのだろう。


「まぁ噂を流した人間は誰かなんとなく想像できるぜ」

「誰だ」

「あの女に決まっているだろ?婚約解消はまだ公になってねぇが、王都でやりたい放題をしたしっぺ返しがそろそろ来ているだろうよ」


「しっぺ返し?」

「考えて見ろよ。伯爵令嬢程度がこれまで騎士団をパシリに出来たのはお前の婚約者だからだ」


パシリとは言い方が酷いな。
確かに私の代わりに護衛をしてくれた心優しい部下は多かった。
他にも天候が悪くなり迎えに来て欲しいと言われた時も私は任務中で困っている時に別の部隊の騎士が代わりに馬車を出してくれたな。


「お前と全くの他人になったのなら騎士団の連中は従う理由はない」

「そうだな」


だが、ディアッカの言わんとしている意味をイマイチ理解しかねてる私は気づかなかった。


私との婚約が解消された事で大きな被害を受ける事を。


しおりを挟む
感想 404

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

処理中です...