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閑話1裏で動く者達
しおりを挟むカスメリア王国内では様々な事情を抱えていた。
まず第一に王位継承権を持つのは国王と王妃から生まれた王女、もしくは王子だった。
このまま行けば第一王女のテレシアが立太子するのだが、本人はまだその時ではないと拒んでいた。
テレシアは現段階で自分が立太子したしても貴族派が自分の息子を婚約者に押し付け、最悪の場合その婚約者を次代の王にしかねなかった。
相手を選ばなくてはならないが…
一番心配しているのは妹のリディアだった。
社交界で悪い噂を流され、貴族派がリディアを苦しめている事は知っていたが過度に庇えばリディアの立場が悪化すると知っていた。
そんな時だった。
ずっと離宮に塞ぎこんでいたリディアが舞踏会に参加すると言い出したのは。
舞踏会に参加すれば何を言われるか解っていた。
それでもこのままではいけないと己の心をふるいたようとした妹を誇らしく思った。
しかし現実は厳しかった。
「見ろよ…」
「ハズレ姫だぞ」
「いい加減身の程を弁えればよいのに」
聞こえるようにこれ見よがしにリディアを侮辱する声はテレシアをこれ以上無い程傷つけた。
(王女であるあの子に!)
テレシアは盤石な地位を築けない事を悔しく思った。
「お姉様、少し風に当たって来ます」
「じゃあ私も…」
「お姉様は挨拶周りがありますでしょう。ニナもおりますし大丈夫ですわ」
タイミング悪く大臣に視線が合い、傍を離れるしかなくなった。
だけどテレシアが離れた後にリディアは体調を崩してしまい貴族達に囲まれてしまった。
(あいつ等!)
解っててわざと声をかけたのだ。
すぐに行きたくても周りの貴族がテレシアを囲んで不可能だったが。
「あれは…」
大勢に囲まれるリディアを抱き上げたのはシオンだった。
「アスハルト伯爵…」
振るえるリディアに上着をかけそのままその場を去って行く姿は騎士物語の姫と騎士のようだった。
誰もがリディアに対して救いの手を差し伸べなかったのに。
(いいえ違うわ…)
テレシアは知っていた。
過去にリディアが危機的状況の中、唯一命がけで救ってくれた少年がいた。
それが幼き頃のシオンだった。
(まさか二度も救われるとは…)
テレシアは笑みを浮かべた。
遠目からもわかる程にリディアは恋する乙女の表情だった。
リディアにとってシオンは生きる支えだった。
幼少期から恋心を抱き続けていた。
今でもその思いは色あせることがない。
二人を見てテレシアは不敵に微笑んだ。
「殿下…」
「何かしら?」
「何か良からぬ事を考えていませんか」
傍にいた護衛騎士は嫌な予感しかしなかった。
その予測通りテレシアは翌日に王妃の元に向い面会に約束を取り付けたのだった。
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