婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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24優しい贈り物~リディアside

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あの夜の事を忘れることができず。
手紙には当たり障りのない事を書いたけど、離宮に来てくださることになり私は浮かれていた。


「姫様、そんなにはしゃいでは熱が」

「そんな…普通よ」

「普段はそこまで身なりに気を使われないではありませんか」


朝から湯浴みをしてヘアケアを念入りにして服装にも気を使った。
余り派手ではダメだけど、失礼にならない服装を心掛けて。

贈り物の髪飾りも身に着けて。

「シオン様はどのようなお茶が喜ばれるかしら?」

「最高の物を用意していますが、シオン様はお気になさらないでしょう」


優しい方だもの。
きっとお口に合わなくても笑って美味しいですって言ってくださるような優しい方だわ。


だけどはしゃぎ過ぎた所為で私はまた失敗をしてしまった。




シオン様の前で体調を崩してしまった。
挙句の果てにお茶を淹れてくださり果物を…なんて事なの。



「私は貝になりたいわ」

「姫様、シオン様は気にしておられませんでしたわ」

「ええ…なんというか慣れていたわ」


世話をする事に慣れているってどうなの?
いくら騎士とは言えどそこまで何でもこなせるものなのかしら?


「ビッチ令嬢の所為でしょうね」

「ヴィッツよ。ヴィッツ」

「あんなのビッチで十分ですわ」


私も彼女の事は好きではない。
でもビッチなんてあんまりじゃないかしら?


「社交界の噂も日に日に酷くて、シオン様は大丈夫かしら」

「姫様…」

「私がもっと権力を持っていれば守って差し上げられたかしら?いいえおこがましいわ」

そんな真似をしてもシオン様は喜ばれないわ。
権力で人の心を動かす事は出来ないのは解りきっているわ。


それでも思うの。


私があの方の隣に立てるなら…


どんな事でも耐えられる気がした。


でも私はあの方の隣に立てない。


「姫様、アスハルト伯爵様からお手紙とお見舞いのお花が」

「まぁ!」

「姫様興奮しては…」


解っているのにあの方への思いが燃え上がる。
まるで消えることがない情熱の炎の如く私の恋は冷めることが無かった。



きっと私はあの方以外の男性を愛せない。
隣国から留学に来られたライルハルト様を見てもときめかない。


シオン様の以上に優しい男性はいない。

同時にあの方のように美しい心を持った方もおられないのだから。


だけど神様は私を見捨てなかった。


その数日後、お母様よりシオン様と私との婚約が正式に決まったと聞かされた。

聞けばヴィッツ伯爵令嬢が望んだそうだ。
最初こそは許せなかったけど、私は政略結婚でも受け入れてくださったことを喜んだ。


お母様曰く、恋心ではなくとも私を思ってくださること。
幸福に生きて欲しいとの事。


そして私以外に愛人を持たないと約束してくださった。


女性としてこれ以上の喜びはないわ。


政略結婚で愛人を持つ男性は少なくないのに、シオン様は妻の役目を果せるかも解らない私にここまで思っていただけるのだから。



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